平成29年分の確定申告から、医療費控除の手続きが簡略化されるそうですが、具体的な内容について教えてください。
【この記事の監修者】 讃良周泰税理士事務所 税理士 讃良 周泰
税制改正により、医療費控除は平成29年分の確定申告から手続きが簡略化されます。
保険診療の医療費について、集計と領収書の保存が不要となるからです。
そこで今回は、医療費控除の手続きの簡略化に関して、具体的な内容や注意点などについて解説します。
目次
改正の概要
(1)医療費控除の手続き
医療費の領収書を確定申告書に添付又は提出時に提示する代わりに、「医療費控除の明細書」を添付することが原則となりました。
(2)領収書の保存期間
確定申告書の提出期限の翌日から5年間です。
税務署が医療費の領収書の提出・提示を求めることがあるためです。
医療費控除の明細書の書式
医療費の明細記入欄は次のように変更になります。
(1)平成28年以前
医療費の明細のみです。
(2)平成29年以降
「1医療費通知に関する事項」と「2医療費(上記1以外)の明細」に区分されます。
医療費通知とは
1年間の保険診療の医療費について、平成30年から各保険組合に発行が義務付けられる明細書のことを指します。
医療費控除の要件を満たす医療費通知を確定申告書に添付する場合、その分の領収書の保存は不要です。
医療費控除の要件を満たす医療費通知
医療費通知が医療費控除の要件を満たすためには、次の6項目のすべてが記載されていることが必要です。
①被保険者等の氏名
②療養を受けた年月
③療養を受けた者
④療養を受けた病院、診療所、薬局等の名称
⑤被保険者等が支払った医療費の額
⑥保険者等の名称
医療費控除の明細書の記入方法
(1)「1医療費通知に関する事項」
医療費通知に記載されている「被保険者等が支払った医療費の額」の合計を転記します。
(2)「2医療費(上記1以外)の明細」
医療機関や交通機関など、支払先ごとに医療費を集計して合計額を記入します。
経過措置
特例措置として、平成29年~2019年までの医療費控除については、平成28年以前と同様に、医療費の領収書を確定申告書に添付または提出時に提示することが認められます。
証明書類の取り扱い
たとえば、寝たきりの人のおむつ代など、医師の証明書を要する特定の医療費については、いずれかの方法が選択できます。
(1)確定申告書に添付又は税務署に提示する
(2)医療費控除の明細書の余白に次の項目を記入する(この場合の保存期間は5年間)
・証明年月日
・証明書の名称
・医療機関など証明者の名称
医療費通知が医療費控除の要件を満たしていない場合
保険組合によっては、医療費通知が医療費控除の要件を満たしていない場合があります。
その場合は、次のように対応します。
(1)原則
医療費控除の明細書の「2医療費(上記1以外)の明細」に記入します。
(2)医療費通知を医療費控除の明細書として代用する方法
代用することで、「2医療費(上記1以外)の明細」へ記入することが省略でき、「1医療費通知に関する事項」に合計額を転記するだけになります。
医療費通知へ補完記入することで代用できるケースは主に次の通りです。
①自己負担額が記載されていない
医療費総額(10割負担)だけ記載されている場合は、自己負担額を自分で記入します。
②医療機関名などが記載されていない
支払先の名称を自分で記入します。
なお、