顧問税理士から「法人成り」を勧められました。
コスト削減以外にもメリットはあるでしょうか?
また、デメリットについても教えてください。
【この記事の監修者】 讃良周泰税理士事務所 税理士 讃良 周泰
個人事業主に「法人成り」を勧める税理士の中には、自分の利益を目的にするケースがあります。
そのため、特に「個人事業主よりも法人成りしたほうが節税=コスト削減できる」と勧められた時は、本当にメリットがあるのかどうかを慎重に検討するべきです。
顧問先の法人成りによる税理士のメリット
顧問先の個人事業主が法人成りした場合の顧問税理士のメリットには次のようなものがあります。
・法人のほうが顧問先の事務的負担が増えるため、個人事業主より顧問料(収入)がアップできます。
・法人は決算期を自由に設定できるため、繁忙期(毎年3月15日まで)の確定申告業務を閑散期にシフトできます。
言い換えれば、繁忙期の閑散期の業務量を平準化することが可能です。
節税を理由に法人成りを勧められたときの検討すべき点
(1)社会保険料の負担
法人成りすると、社会保険(健康保険・厚生年金・介護保険)は強制加入となります。
個人事業主のように任意加入(従業員が5人未満の場合)ではありません。社会保険加入による法人が負担する社会保険料は、給与の約15%です。たとえば、一人あたりの年収が500万円の場合、社会保険料は75万円となります。
(2)税理士へ支払う顧問料の増加
(3)法人の設立費用(収入印紙や司法書士などへ支払う報酬などトータルで20~30万円ぐらい)
法人成りの税制面の主なメリット
(1)所得金額に対する税率が抑えられる
個人事業主の場合、所得金額に比例して所得税率が5%~45%までと税率が高くなります。
一方、中小企業に該当する法人の場合、法人税率が年800万円までは15%、年800万円超は23.4%(平成30年4月1日以降に開始する事業年度は23.2%)です。
大企業は一律23.4%です。
そのため、利益を法人の所得と個人名義(役員報酬など)に分散することで、所得税率と法人税率が抑えられます。
(2)給与所得控除が活用できる
所得金額を役員報酬として分配すると、自動的に現金の支出の伴わない給与所得控除が個人の所得金額から控除できます。
その控除額が年収に比例して、65万円から最高で220万円まで控除できます。
個人事業主に適用できる青色申告特別控除額の最高額65万円と比較すると有利であることがわかります。
(3)扶養親族に対する給与の経費計上と所得控除が併用できる
個人事業主の場合には、配偶者など家族に給与を支給すると配偶者控除などの所得控除は適用できませんが、法人の場合は併用できます。
(4)赤字の繰越期間で有利である
青色申告の場合、過去の赤字を翌年度以降の所得金額と相殺できます。
それによって、所得金額は圧縮されて節税効果があります。
繰越可能期間は次の通りです
・個人事業主:繰り越すことができる期間は3年間
・法人:繰り越すことができる期間は9年間(平成30年4月1日以降に開始する事業年度は10年間)
(5)消費税の納税が最長で2年間免除される
消費税の課税事業者である個人事業主が資本金1000万円未満で法人成りすれば、基準期間(前々事業年度)の課税売上高は0円(1000万円以下)であり、消費税の納税が最長で2年間免除されます。