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譲渡代金が回収不能となった際に適用できる所得税の特例制度を解説

資産の譲渡代金が回収不能となった場合や、保証債務を履行するために資産を譲渡したとき、譲渡代金を所得の計算から除外することができる特例が存在します。

本記事では、「資産の譲渡代金が回収不能となった場合等の所得計算の特例」の要件と、適用する際の注意点について解説します。

【この記事の監修者】
讃良周泰税理士事務所 税理士 讃良 周泰

「資産の譲渡代金が回収不能となった場合等の所得計算の特例」の概要

所得税法第64条(資産の譲渡代金が回収不能となった場合等の所得計算の特例)は、資産の譲渡等による収入金額を回収することができなくなった場合、その回収することができなくなった金額または、返還すべきこととなった金額に対応する部分の金額は所得金額の計算上なかったものとみなす制度です。

たとえば不動産を売却後に、買主の会社が倒産したことで譲渡代金を回収できなくなった場合、回収不能額等の金額は所得の計算から除かれます。

また同法2項では、保証債務を履行するために資産を譲渡した場合についても、本特例を適用することが認められています。

保証債務の履行の範囲

保証債務の履行とは、本来の債務者が債務を弁済しない状況下において、代わりに債務を弁済することをいいます。

民法第446条(保証人の責任等)に規定する保証人の債務や、第454条(連帯保証の場合の特則)の規定する連帯保証人の債務の履行などが、所得税法第64条2項の「保証債務の履行」に該当します。

また、次に掲げる債務の履行等に伴う求償権を生ずることとなる場合も、保証債務の履行の対象です。

<保証債務の履行に該当する主なケース>
・不可分債務の債務者の債務の履行があった場合
・連帯債務者の債務の履行があった場合
・合名会社または、合資会社の無限責任社員による会社の債務の履行があった場合
・身元保証人の債務の履行があった場合
・他人の債務を担保するため、質権もしくは抵当権を設定した者がその債務を弁済し、または質権もしくは抵当権を実行された場合
・法律の規定により連帯して損害賠償の責任がある場合において、その損害賠償金の支払いがあったとき

借入金で保証債務を履行し、借入金を返済するために資産を譲渡したとき、その資産の譲渡が実質的に保証債務を履行するためのものであると認められる場合には、保証債務を履行するため資産の譲渡となります。

「実質的に保証債務を履行するための資産の譲渡」は、保証債務を履行した日からおおむね1年以内に、借入金を返済するための資産譲渡を行った場合も含まれます。

また被相続人が借入金で保証債務を履行し、借入金を承継した相続人がその借入金を返済するために資産を譲渡した場合も保証債務の履行に該当します。

所得税法第64条2項の適用要件

保証債務を履行した際に本特例を適用するためには、次の要件をいずれも満たしている必要があります。

本来の債務者が返済不能の状態であること

所得税法第64条2項は、保証債務を履行するために資産を譲渡した場合において、求償権の全部または一部を行使することができなくなった場合、行使することができないこととなった金額を所得金額の計算から除外する規定です。

求償権が行使できない状態とは、本来の債務者が資力を失っているなど、債務の弁済能力がなく、将来的にも回収できない場合をいいます。

求償権の全部または一部を行使することができない状態の判定は、所得税法基本通達51-11から51-16までの取扱いに準じて行います。

本来の債務者が破産や失踪している場合、債権を回収することはできませんので、本特例を適用することが可能です。

一方、弁済を求めていないだけで本来の債務者に弁済能力があるときは、求償権が行使できない状態とは言えないため、特例は適用できません。

特例を適用する目的での譲渡ではない

所得税法第64条2項の規定は、保証債務を履行するために資産を売却した際に適用するものです。

したがって、本来の債務者が債務を弁済できる状態であるときにおいて、債務の保証をした場合には、特例を適用することはできません。

また本特例を適用する際、不動産所得や事業所得、山林所得の計算上の必要経費に算入される金額は対象から除かれます。

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