不動産の譲渡所得を計算するためには、売却不動産の取得費を確認しなければなりませんが、申告時点において購入金額が記載された契約書等が手元に無いケースもあります。
本記事では、譲渡所得の取得費を調べる方法と、取得費がわからないときの対処法について解説します。
【この記事の監修者】
讃良周泰税理士事務所 税理士 讃良 周泰
目次
譲渡所得の取得費に該当するもの
譲渡所得の取得費に該当するものとしては、売却不動産の購入代金や建築代金、購入手数料などがあります。
土地関係であれば取得した際に支払った測量費や造成費、借地権も取得費として計上できますし、相続・贈与で取得した不動産を売却したときは、登録免許税や不動産取得税も取得費に計上できます。
ただし、業務用の資産については事業所得等の必要経費に計上したものは、譲渡所得の取得費に含めることはできません。
譲渡不動産の購入費が不明なときの原則的な対処法
購入金額が記載された契約書が無く、売却した不動産の取得費がわからない場合、次のいずれかの方法で取得費を算出します。
契約書以外の書類等で取得費の額を確認する
取得費として計上できるのは、売買契約書や請負契約書などに記載されている具体的な金額です。
購入した当時の周辺地域の相場などの価格は、具体的な購入金額ではないため、取得費として用いることはできません。
一方で、契約書以外で購入した際の金額が確認できるときは、その額を取得費にすることが可能です。
契約書以外で購入金額が確認できるものとしては、不動産を購入した際の領収書や覚書などがあります。
また通帳に振込先の名前が印字されていれば、不動産を購入した時期と金額を特定することができるため、取得費として用いることができます。
ローンで売却不動産を購入した際に設定した抵当権は、不動産の購入金額とは異なる可能性があるため、そのまま取得費として用いることは難しいです。
しかし、抵当権を設定する際の書類に不動産の購入金額が記載されていれば、その金額を取得費とすることはできます。
概算取得費を適用する
概算取得費は、先祖代々相続していた土地を売却したなど、売却不動産の取得費がわからないときに用いることができる取得費です。
実額の取得費が確認できる場合でも、実額よりも概算取得費の額の方が大きい場合には、概算取得費を用いて計算することが可能です。
ただし、概算取得費として計上できる額は売却金額の5%と少額であるため、ほとんどのケースで譲渡所得が発生することになる点には注意してください。
譲渡不動産の購入費が不明なときの例外的な対処法
不動産の取得費を確認できない場合でも、特定の条件に当てはまるときは概算取得費以外の金額を取得費とすることができます。
指数等を用いて合理的に取得費を算出する
売却不動産の取得費を算出する手段の一つとして、「市街地価格指数」などを用いる方法があります。
市街地価格指数は、市街地の宅地価格の推移を表す指標で、特定の時点の価値を「100」とし、各都市の価値の変動を指数化しているものです。
市街地価格指数を調べれば、売却時点の不動産の価格から購入当時の価値を割り出すことができますし、平成12年の国税不服審判所の裁決で市街地価格指数を使用した取得費の算出方法が認められたケースもあります。
一方で、市街地価格指数は全国主要都市内で選定された標準的な土地を対象としているため、指数だけを用いて取得費を算出しても否認される可能性が高いです。
実際、市街地価格指数だけを用いた取得費の算出方法は、裁判等で否認されるケースが多発しています。
そのため市街地価格指数だけで取得費を計算するのではなく、取得費を合理的に算出する際の根拠の一つとして用いることが望ましいです。