忘年会の時期となり、当社でも例年同様、忘年会を実施しようと思っていますが、最近では企業の「忘年会離れ」が著しく、その理由の一つに「労働時間としてカウントされる恐れがあるため」というものがあったそうです。
実際、忘年会は労働時間としなければならないものなのでしょうか。
【この記事の著者】 定政社会保険労務士事務所 特定社会保険労務士 定政 晃弘
東京商工リサーチの「忘・新年会に関するアンケート」調査(2023年)によると、企業の今シーズンの新・忘年会実施予定率は54.4%とのことでした。
また、「コロナ禍前は実施、今回は実施しない」と回答した企業のうち、「実施しない理由」を聞いたところ、最も多かった回答が「開催ニーズが高くないため」(53.8%)であり、「労働時間としてカウントされる恐れがあるため」も10.0%ありました。
そこで忘年会(あるいは新年会)の実施時間について、労働時間に含めなければならないのかどうかを検討してみたいと思います。(忘年会は通常勤務終了後の所定労働時間外に行われるものとします)
そもそも、労働時間とは「使用者(会社)の指揮命令下に置かれている時間」であり、「使用者の明示又は黙示の指示により労働者が業務に従事する時間は労働時間に当たる」とされています(「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」)。
※「黙示の明示」の典型例として、会社は労働者に対して残業する許可をしていないものの、残業している状況を黙認している状態が挙げられます。
このガイドラインに照らし合わせて考えると、忘年会への参加が業務の一環であって、全員参加を義務とするような場合は、「使用者の指揮命令下の置かれている」ため、労働時間としなければなりません。
一方、参加するかどうか社員の判断に任されているような場合は、労働時間に含める必要はありません。
ただし、参加の判断は社員に任せるとしていても、実質的に参加せざるを得ない状況(例えば、参加しないことにより後日何らかの不利益を受ける場合などが該当します)の場合は、労働時間とみなされる可能性が高くなります。
労働時間に含むかどうかで問題となりやすいのは、新年会や忘年会の他、社員旅行や研修、健康診断などいろいろなケースがあります。