動画解説はこちら
子供が他人の物を壊したら、当然、親は叱ります。
もちろん、大人が他人の物を壊しても怒られます。
しかし、大人も子供も怒られるだけでは済まないかもしれません。法的には、犯罪になる可能性があります。
2014年は年明け早々、全国的に物が壊されるという「器物損壊事件」が立て続けに起きました。法的に解説していきましょう。
事件はこうして起きた
「公用車のタイヤ29本がパンク 器物損壊事件として捜査 千葉」(2014年1月6日 産経新聞)
6日午前8時20分ごろ、千葉県佐倉市の県印旛合同庁舎の駐車場に止まっていた15台の公用車のタイヤ計29本がパンクさせられているのを県の女性職員が見つけ、佐倉署に通報した。タイヤは千枚通しのような鋭利なもので刺されていた。
「兵庫県警察の捜査車両10台がパンク 年末年始の休み中に被害か」(2014年1月6日 産経新聞)
兵庫県警は6日、本部本館(神戸市中央区)の地下1~3階にある駐車場で、捜査車両10台のタイヤ計16本が何者かにパンクさせられたり、傷をつけられたりしたと発表した。
「パンク、落書き…駐車場の車40台以上被害 茨城」(2014年1月4日 産経新聞)
茨城県土浦市で3日午後から4日早朝にかけ、40台以上の乗用車がパンクさせられたりスプレーで落書きされたりする被害に遭った。土浦署によると、車は数百メートルの範囲のアパートや住宅敷地内の駐車場に止められており、窓ガラスを割られた車もあった。
これら以外にも、福島県郡山市では2013年10月以降、数十件のタイヤパンク被害が相次いでおり、大阪市では市営地下鉄の車両側面へのスプレーでの落書きが2013年5月以降、6回確認されているようです。
リーガルアイ
車のタイヤをパンクさせたり、電車などに落書きすると、それがたとえいたずらであっても、腹いせであっても、アートであっても「器物損壊罪」という犯罪になります。
「刑法」第261条(器物損壊等)
前3条に規定するもののほか、他人の物を損壊し、又は傷害した者は、3年以下の懲役又は30万円以下の罰金若しくは科料に処する。
犯罪なので、犯人が逮捕されれば刑事罰を受けることになります。そして同時に、民事で損害賠償の問題も出てきます。
仮に子供が、たとえいたずらだったとしても、同様のことをやってしまったら、もちろん損害賠償の話になります。
未成年者の損害賠償責任について法的には、その未成年者に物事の是非善悪を理解する能力がある場合には、その未成年者本人が賠償義務を負い、その能力がない場合には親などが責任を負う、とされています。
ちなみに、子供の責任能力については、11~12歳くらいが境界線とされています。
「民法」第712条(責任能力)
未成年者は、他人に損害を加えた場合において、自己の行為の責任を弁識するに足りる知能を備えていなかったときは、その行為について賠償の責任を負わない。
「民法」第714条(責任無能力者の監督義務者等の責任)
1.前2条の規定により責任無能力者がその責任を負わない場合において、その責任無能力者を監督する法定の義務を負う者は、その責任無能力者が第三者に加 えた損害を賠償する責任を負う。ただし、監督義務者がその義務を怠らなかったとき、又はその義務を怠らなくても損害が生ずべきであったときは、この限りで ない。
2.監督義務者に代わって責任無能力者を監督する者も、前項の責任を負う。
ところで、アメリカの初代大統領であるジョージ・ワシントン(1732‐1799)に関する有名な逸話があります。
子供のころ、父が大切にしていた桜の枝を切ってしまったことを、「僕がやりました」と正直に告白。
父は怒るどころか、「お前の正直さは、桜の木1,000本よりも価値がある」と逆にほめられた、という逸話です。
日本の法律で考えると、当然ワシントンは器物損壊罪になる可能性があります。
ただし、器物損壊罪は親告罪なので、父親が告訴しないと刑罰を科すことはできない、ということになります。
器物損壊だけではありません。繰り返される、いじめの問題。最近急増している子供による自転車事故など、あなたの子供もいつ「加害者」になってしまうかもわかりません。
きっかけは、ほんの些細な出来心やいたずら、または怒りの衝動だったとしても、