棚卸資産(在庫)が膨らむことで、結局は資金繰りが厳しくなり不正会計をする会社があるようですが、具体的には、どのような仕組みなのでしょうか?
【この記事の著者】 江黒公認会計士事務所 公認会計士 江黒 崇史
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ビジネスでは先に物を仕入れて、仕入を決済します。
そして、販売があって入金があるため、在庫が増えて販売ができなければ企業の資金が回らなくなってしまいます。
そのため、不正会計に手を染める会社があるのです。
ビジネスでは、資金が続くことが大事です。
ただ、商売は物がなければ始まりません。
先に物を仕入れて決済するため、資金が先に出ていってしまいます。
そして、売上があって入金があります。
このような企業の正常な運転に用いる資金を運転資本ということもあります。
今回は不正会計の解説ではないですが、実際に上場企業であった在庫が膨らむ事例をみていきましょう。
下の表は、ある会社の「簡易貸借対照表」の流動資産部分をピックアップしたものです。
(単位:百万円)
07/03 08/03
流動資産
現金及び預金 60,189 45,298
受取手形及び売掛金 2,609 2,333
不動産事業有価証券 6,473 3,852
たな卸資産 293,001 437,778
共同事業出資金 18,936 37,358
繰延税金資産 3,793 4,554
その他 12,758 25,126
流動資産合計 397,761 556,301
在庫である棚卸資産が増加しているのがよくわかります。
受取手形、及び売掛金は少し減っていますが、現預金はかなり減少しています。
では次に、この会社の「損益計算書」を見てみましょう。
損益計算書は3期並べてみます。
(単位:百万円)
06/03 | 07/03 | 08/03 | |
---|---|---|---|
売上高 | 64,349 | 180,543 | 243,685 |
経常利益 | 10,677 | 56,398 | 61,677 |
売上高経常利益率 | 16.6% | 31.2% | 25.3% |
当期純利益 | 7,868 | 30,039 | 31,127 |
売上高登記純利益率 | 12.2% | 16.6% | 12.8% |
こうして見ると、増収増益で好調のように見えます。
しかし、