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支払いスケジュールを無視した不適切な売上取引事例


複数の支払いスケジュールがあるにもかかわらず、契約時に売上計上処理をするといった不正な前倒し売上の事例があれば教えてください。


【この記事の著者】 江黒公認会計士事務所 公認会計士 江黒 崇史
http://www.eguro-cpa.com/

ビジネスでは、さまざまな取引があります。

取引があれば、その実態を会計に反映させるのが経営者としての説明責任であり、会計の重要な役割です。
しかし、残念ながら、その実態を超えた会計処理(不適切な会計処理)をしてしまう例が後を絶ちません。

今回は、前回も解説したアニメーション制作会社で行われた不適切な売上取引の別の事例を解説します。

このアニメーション制作会社(以下、「当社」とします)では、作品が企画段階にある時に、海外の配信業者へ作品のビデオ化権利等を許諾する「プリセールス取引」を展開していました。

本プリセールス取引の相手方であるA社は、当社に対してミニマムギャランティを支払う契約を締結しました。
ミニマムギャランティ(以下、「MG」とします)とは、権利許諾の対価として、支払いが保証される額をいいます

では、このMGはどのような支払いスケジュールになっていたかというと、以下のようになっていました。(調査報告書より抜粋)
なお、契約は2016年2月5日付です。

MGに占める割合金額支払スケジュール
【非開示】%【非開示】本契約に署名したとき
【非開示】%【非開示】第1回の同時放送エピソード用の資材を受領時又は2017年1月3日のどちらか遅い日時。

 

ただし、第1回同時放送エピソード用の資材が完全に引き渡されている場合には、2017年1月15日より遅くなることはない。

【非開示】%【非開示】ライセンシーによる許諾地域内におけるDVD/BDの最初のリリース時。

 

ただし、資材が2017年8月31日までに完全に引き渡された場合には、2018年3月31日より遅くなることはない。

 

さて、上記のように段階ごとにMGは支払いがなされる、当社からみると受け取れることになります。
となると、段階ごとに売上を認識すべきということになります。

そのような中、当社は本プリセールス取引について、権利を対象とするものであることから、契約締結日にMGの全額を売上計上しています。

しかし、上記スケジュールを見ての通り、本契約では段階的にMGを支払うようになっています。
特に、3つめの支払いスケジュールでは「ライセンシーによる許諾地域内におけるDVD/BDの最初のリリース時」とあるので、DVD/BDをリリースしていない時点では、契約において明記された役務の提供が完了しておらず、その分を含めた契約時売上全額計上は、不正な売上の前倒し計上となります。

本件にもかかわらず、一般的に、契約時=売上計上という処理は多く見られます。
当事者の気持ちからすれば、契約時に売上を全額上げたい気持ちもわからないではないですが、売上として成立するための役務の提供や所有権の移転、対価の成立条件などをしっかり確認する必要があります。

売上については、その計上タイミングや要件に十分注意していきましょう。

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