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経理責任者による横領事件の手口を解説




従業員個人が自分の利益のために行なった不正会計事例を教えてください。


【この記事の著者】 江黒公認会計士事務所 公認会計士 江黒 崇史
http://www.eguro-cpa.com/

企業の不正の多くは売上・利益の不適切会計が多いものですが、従業員個人が私腹を肥やすために行われる場合もあります。

今回は、経理責任者が複数年にわたり会社の現金を横領していた事件を紹介します。

不正要素を簡潔にまとめると次のようになります。

不正科目

現金、預金。

不正要因

経理責任者による横領。
横領した資金の使途は、不動産や車両購入、服飾用品や家電家具購入など。

驚くべきは、その金額です。
調査報告書より抜粋します。

使途金額(千円)備考
不動産購入(リフォーム費用含)267,540登録免許税等税金、仲介手数料、その他関連費用含む
車両購入(自動車4台、バイク2台)17,100 
時計29点22,240 
有価証券等取得5,780 
服飾用品家電家具その他動産購入27,241 
飲食遊興費5,702 
旅行代1,333 
実親への仕送り1,700 
その他カード支払い等18,918クレジットカード利用明細未開示分16,800(千円)含む
合計金額367,556千円単位未満切り捨てのため合計は合致しない

車両4台、バイク2台、時計29点とは、呆れた使い方です。

では、どのように不正を実行したのでしょうか。

主たる不正手法

1.オンライン決済を悪用した自身の口座への送金:533万円
2.上司から請求書等のために印鑑を借りた際に、不正に払戻伝票に捺印:2億1882万円
3.廃棄すべき銀行口座のキャッシュカードを悪用して不正出金:1億5114万円
4.現金売上の着服、および現金回収された売掛金の着服:1447万円

この中でも、金額の多い2番の不正について見てみましょう。

不正実行者は経理責任者のポジションにありました。
そのため、取締役に押印申請簿を申請すれば、印鑑を借りて書類に捺印が可能な状況でした。
そこで、不正実行者は印鑑を借りた際、自ら取り寄せた白紙の払戻請求書に捺印を行ない、その払戻請求書を銀行窓口へ持ち込み、現金を引き出して着服していたということです。

ところで、現金が引き出されれば当然いつかは会社に発覚するはずです。
そこで隠蔽工作として、会社で購入した材料費を過大に計上して、引き出した現金は材料費購入で計上した買掛金の支払いとして処理をしていたということです。

多くの会社で印鑑は押印申請簿に基づき管理していると思いますが、印鑑や通帳、キャッシュカードについては厳重に管理をしていかなければいけません。
また、

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