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埋没原価の意味とは? 経営上での取り扱い方とは?

「埋没原価」とは、どういうものでしょうか? また、経営上どのように考え、どう対応すればいいでしょうか?


【この記事の著者】 江黒公認会計士事務所 公認会計士 江黒 崇史
http://www.eguro-cpa.com/

「埋没原価」とは、過去において支出された費用=原価のことです。

前回のコラムで機会損失とは?機会損失の意味と使い方についてお話をしました。
この機会損失と並んでよく質問を受ける会計用語に、埋没原価というものがあります。

この埋没原価ですが、「埋没」という言葉が示すように過去に支出・費消されたが、今後の経営判断・意思決定に影響を与えないものや、新規プロジェクトの開始といった際において、新規プロジェクトの有無にかかわらず発生する人件費や地代家賃のような固定費を指します。

大事なポイントは、
①過去の支出であって、今後の意思決定に影響を与えない、取り返しのつかない費用。
②意思決定の有無にかかわらず発生する費用。
これらは、今後の経営判断に含めてはいけないということです。

例えば、大型のダム工事や高速道路のような、大きなプロジェクトがスタートした場面を思い浮かべてください。
このプロジェクトの継続にあたり、途中でそのプロジェクトの採算性がどう見込んでも赤字になる、あるいは追加のコストが想定以上に発生するなどということがわかったときに、あなたはどう考えますか?

「これまで○○億円投資したのだから、このプロジェクトは何が何でも完成させなければもったいない」
と思われるでしょうか?

しかし、過去に○○億円投資をした、ということに感情が引っ張られて赤字プロジェクトを今後も推進していくことが、はたして本当に正しいのでしょうか?

このような過去の支出を、埋没原価と呼びます。
そして同時に、過去の埋没すべき原価にとらわれずに意思決定することが経営判断として求められます。

なぜなら、過去において支出した費用はもう取り戻せないものです。
今後も赤字となるプロジェクトに対する経営判断において、取り戻せない過去の埋没原価にとらわれてはいけません。
未来に向けた経営判断として、今後得られる効果と今後かかるであろう費用を比較考慮して意思決定すべきなのです。

途中で採算が悪いとわかった建築中の道路やビルを、「もったいないから」とその後も費用を重ねて完成させても、成果が得られないのであれば、完成させるだけ無駄なことがわかっていただけると思います。

埋没原価が発生するのは、何も大型の開発に限りません。
たとえ、新規のアプリ開発や出版プロジェクトなどでも、仮にそのプロジェクトが完成しても、成果が得られないのであれば、過去に支出した費用は埋没原価です。

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