今回は、「刑法」にある脅迫罪と強要罪の違いについて解説します。
事件はこうして起きた
「“大勢を敵に、逃げたまえ”ゲーム仲間を脅迫、転居させる 強要容疑で男女を逮捕」(2016年3月15日 産経ニュース)
携帯電話のゲームサイトで知り合った女性らを脅して転居させたとして、福岡県警春日署は、長野県諏訪市の無職の女(40)と福岡県筑紫野市の自営業の男(44)を逮捕した。
男は2015年7月12日~9月5日にかけて、福岡県の39歳の女性の自宅に、「最終通告です。大勢を敵に回しており、攻撃される準備が行われている。逃亡したまえ」などと脅迫する内容の手紙やハガキ計7通を郵送。
そのため、女性と同居の友人女性は引っ越しを余儀なくされた。
当初、容疑者の女と被害者女性はゲームサイトで知り合い交流していた。
ところが、「交友関係を解消する」と言われたことに女が腹を立て、会員制交流サイト(SNS)で知り合った容疑者の男に嫌がらせを依頼。
そこで、男が被害者女性に手紙などを送り付けたという。
リーガルアイ
今回の事件では、脅迫をしたのに強要罪で逮捕されています。
では、脅迫罪と強要罪では何が違うのでしょうか?
「刑法」
第223条(強要)
1.生命、身体、自由、名誉若しくは財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、又は暴行を用いて、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害した者は、3年以下の懲役に処する。
第222条(脅迫)
1.生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者は、2年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する。
条文からもわかるように、脅迫罪は、相手に危害を加えることを告げるだけで成立するのに対して、強要罪は、危害を加えることを告げて相手に義務のないことを行わせることで成立します。
今回の事件では、被害者女性が引っ越さなければ脅迫罪が適用された可能性がありますが、引っ越しという義務のない行為を余儀なくされたために強要罪が適用されたということです。
強要罪については以前にも解説しています。
「半沢直樹の“土下座強要”は犯罪になるのか?」
これは、衣料品チェーン店で客として商品を購入した女が「商品が不良品だ」クレームをつけ、店員に土下座を強要した起きた事件とテレビドラマのストーリーから強要罪が成立する要件について解説したものでした。
実際、過去には判例として次のようなものが強要罪と認められています。