今回は、コンサートチケットの転売が犯罪になるのかどうかについて解説します。
事件はこうして起きた
「嵐のチケットを無許可で転売、25歳女逮捕」(2016年9月14日読売新聞)
北海道警札幌中央署は、アイドルグループ「嵐」のコンサートチケットを転売したとして、香川県善通寺市のブリーダーの女(25)を古物営業法違反(無許可営業)の疑いで逮捕した。
容疑者の女は、香川県公安委員会の許可を受けていなかった。
それにもかかわらず、札幌市内の女性ら3人に対し、2015年11月から12月の間に嵐のコンサートチケット5枚を計4回、インターネットの転売サイトで、計7万円で売ったという。
使われた手口は、チケット交換サイトでコンサートチケットを入手した後、転売サイトに出品して高値で販売するというもの。
これまでに、2014年10月から2016年4月にかけて、嵐などのコンサートチケット299枚を全国31都道府県の168人に販売し、約1000万円の売り上げを得た疑いがあるとして、同署は女の余罪を調査しているという。
リーガルアイ
チケットの転売というと、ダフ屋行為を連想する人も多いと思いますが、ダフ屋行為は各都道府県の迷惑防止条例により禁止されています。
たとえば、東京都迷惑防止条例の場合、第2条に次のような内容が規定されています。
「転売の対象となるもの」
乗車券や入場券、観覧券などのチケット
「違反となる転売の目的」
・特定の者に転売する目的
・転売目的者に交付する目的
「違反となる行為」
転売目的で、公共の場や公共の乗り物で次のような行為をすると条例違反になります。
・買う
・うろつく
・つきまとう
・呼びかける
・ビラなどを配る
・列に並んで買おうとする
同時に、転売目的で入手したチケットを公共の場や公共の乗り物で売る行為についても次の行為が禁止されています。
・売る
・うろつく
・つきまとう
・呼びかける
・ビラなどを配る
・展示して売ろうとする
「公共の場」
道路、公園、広場、駅、空港、ふ頭、興行場、その他の公共の場所
「法定刑」
6ヵ月以下の懲役又は50万円以下の罰金
(第8条1項1号)
自分で行こうと思ってチケットを買ったが、行けなくなったために人に転売したという場合は、初めから転売目的ではないので条例違反とはなりません。
また、迷惑防止条例の目的は、公衆に迷惑をかける行為を防止することなので、ネット上は「公共の場所」でも「公共の乗り物」でもないことを考えれば、ネットオークションでチケットを売買すること自体は条例違反とはなりません。
つまり、インターネット上には迷惑防止条例の適用がないということです。
では次に、今回の事件の逮捕容疑に関係する「古物営業法」について考えてみます。
古物営業法は、1949(昭和24)年に制定された法律です。
盗品などの売買や窃盗などの犯罪の防止等を目的としています。
「古物営業法」
第1条(目的)
この法律は、盗品等の売買の防止、速やかな発見等を図るため、古物営業に係る業務について必要な規制等を行い、もつて窃盗その他の犯罪の防止を図り、及びその被害の迅速な回復に資することを目的とする。
「古物とは?」
一度使用された物品で、次のようなものを古物といいます。(第2条1項)
・美術品
・商品券、乗車券、郵便切手など
・船舶、航空機、工作機械などの大型機械類
・使用されない物品で使用のために取引されたものなど
「古物営業とは?」
・古物を売買、交換する営業
・委託を受けて古物を売買、交換する営業
(第2条2項1号)
そして、注意が必要なのは、この営業は許可制になっていることです。
第3条(許可)
1.前条第2項第1号に掲げる営業を営もうとする者は、営業所が所在する都道府県ごとに都道府県公安委員会の許可を受けなければならない。
違反した場合は、3年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処されます。(第31条1号)
また、営業とは