会社を設立したばかりで、労働保険の加入の手続きをする前に、従業員の労災事故が起こりました。この場合、保険給付は行われないのでしょうか?
【この記事の著者】 社会保険労務士
労働保険未加入中の労災事故でも、加入手続きを行った上で、労災保険の給付請求をすることができます。
労災と認定されれば、保険給付は行われます。
解説
保険関係成立と手続き
会社は、労働者を使用して事業を開始した日に、法律上当然に労働保険関係が成立します。
つまり、何もしなくても、自動的に保険関係は成立するわけです。
ただし、行政上の手続きが必要であり、会社は労働基準監督署へ「保険関係成立届」を提出しなければなりません。
原則として、パートタイマーやアルバイトなど呼称を問わず、労働者を一人でも雇用した日の翌日から起算して10日以内に届け出ることになっています。
また、「概算保険料申告書」を提出の上、保険関係が成立した日から50日以内に労働保険料を納付する義務があります。
ちなみに、労働保険の加入手続きは、事業主本人ができますが、専門家に任せる場合は、社会保険労務士に依頼しなければなりません。申請手続きの代行は社労士のみに認められる独占業務のためです。
費用徴収と保険料徴収
今回の質問のケースは、運悪く労働保険の加入続きが間に合わなかっただけですが、故意に手続きをしなかったら、どうなるでしょうか?
労災は労働者を保護するものですから、労災と認められれば労働者や、亡くなった場合はその遺族に対して、通常通りの保険給付が行われます。
しかしながら、会社には、状況に応じてペナルティが課せられます。
①労働者災害補償保険(労災保険)に加入するよう行政から指導勧奨されていたにもかかわらず、手続きを行わなかった場合。
→「故意」に手続きを行わないものと認定し、保険給付額の100%を徴収。
②行政の指導勧奨はないものの、労働者を雇い入れてから1年以上手続きを行わなかった場合。
→「重大な過失」により手続きを行わないものと認定し、保険給付額の40%を徴収。
また、2年以上前から労働者を雇用している場合、労災に遡及加入することになり、2年分の保険料(労働保険料徴収の時効が2年)を支払うことになります。
労働保険料の納付は年度単位ですから、時期によっては3年分近くの保険料を支出しなければならないこともあります。
事業主のためでもある労災保険
車の運転のことを考えてみてください。
事故なんて滅多に起こるものではないからと、自倍賞保険に入らずに運転しますか?
万が一の場合に備えるのではないでしょうか。それと同じです。
労災事故が発生した場合、労働基準法により、