数か月前に採用した社員について、採用選考時に提出してもらった書類に虚偽の記載があることが判明しました。
そのため、当社ではこの社員を懲戒解雇処分としたいと考えていますが問題ないでしょうか。なお、試用期間(6か月間)は経過しています。
【この記事の著者】 定政社会保険労務士事務所 特定社会保険労務士 定政 晃弘
虚偽の書類および虚偽の内容が不明なため、懲戒解雇が可能か判断することはできませんが、いわゆる「経歴詐称」があったからといって、必ずしも懲戒解雇を含めた解雇ができるわけではありません。
履歴書や職務経歴書における経歴詐称というと、年齢や学歴、賞罰(犯罪歴等)の他、スキルや職務経験の詐称が挙げられます。
年齢については「マイナンバー等により本人確認すれば詐称なんかできるはずはない」と思われるかもしれませんが、介護施設で利用者を送迎していたアルバイトの男性が事故を起こし、死亡者が出たという事故がありました。
この男性は実際より7歳若く詐称した運転免許証の写しを施設に提出していたということですが、施設側は原本等による確認を行っていなかったそうです。
※ただし、給与を支払うのであればマイナンバーの提出は必須であるので、そこで確認するべきでしたが。
仮に事故を起こすことなく業務を続けていたところ、何らかのきっかけにより年齢詐称が発覚したとしても、このケースでは施設はこの男性を解雇することはできなかったでしょう。
なぜならば、この施設は求人の際、「年齢不問」としていたからです。
では、学歴に詐称があった場合はどうなるでしょうか。
介護施設の求人のように「学歴不問」とするのであれば、高卒を大卒と偽った場合は判断が分かれる可能性があります。
例えば、高卒を大卒であると偽った場合、当該企業において高卒者と大卒者の給与体系が異なるようであれば解雇も可能と考えられますが、一方で学歴不問としているということは、この企業では学歴は重要視していないと捉えられ、解雇無効となる可能性も排除できません。
10年以上前の話になりますが、大手ハウスメーカーに勤務していた元社員が一級建築士の資格証を偽造したことが発覚し、懲戒解雇された事件がありました。