契約書のひな形、内容証明郵便書式、労務書式、
会社法議事録・通知書のテンプレートが無料

終業時間後の残業を個人事業として行わせることについて

少し前に、社員の残業時間について個人事業主の形式で行わせるというアイデアが、政府主催のコンテストで優勝したという話があったかと思います。会社には経費削減、社員には社会保険料等の支払が減るというメリットがあるとのことですが、このようなやり方を導入することは実際可能なのでしょうか。

【この記事の著者】 定政社会保険労務士事務所 特定社会保険労務士 定政 晃弘

2024年6月に、内閣府が「賃上げを幅広く実現するための政策アイデアコンテスト」を全職員対象に募集し、優勝となったアイデア2件のうち、1件が「残業から副業へ。すべての会社員を個人事業主にする」というものでした。

その内容は以下のようなものです。

  • ・定時以降の残業は禁止する
  • ・これまで定時以降に行っていた残業は、個人事業主として会社から受託する
  • ・会社は個人事業主に対して委託料を支払う

上記の取り組みを行うことにより、会社は委託料等が発生する一方でそれを上回る残業代や社会保険料が削減されるため、経費削減につながると試算しています。また、社員は残業代の代わりに委託料(売上)が計上される一方で残業代がなくなるため、それに付随して発生していた社会保険料や所得税が減る分、手取りがアップすると試算しています。

これだけ見れば労使双方にメリットがあるスキームであるように思えますが、導入することは現実的に「不可能である」と理解すべきです。

厚生労働省もこの件について見解を出しており、一部抜粋の上紹介します。
「一般論として、終業時刻まで労働者として企業で行っている業務と同様の業務を終業時刻以降も引き続き個人事業主として受託するような場合、終業時刻までとそれ以降で使用従属関係に変化が生じなければ、形式上個人事業主としての業務委託契約が締結されていたとしても実態として労基法上の労働者であると判断され、終業時刻以降の業務について割増賃金の支払等労働基準関係法令に基づく対応が必要となる。」

PREVNEXT

関連記事

部下に違法残業をさせると上司も会社も書類送検!?

労働者を保護する法律に「労働基準法」があります。 労働基準法は、労働者の労働契約や労働時間、休日、賃金、安全などの労働条件の最低基準につい...

人格のない社団等が遺贈を受けた際の相続税の取扱い

相続税は個人に対して課される税金であるため、法人が遺贈により相続財産を取得した際は相続税ではなく、法人税の課税対象となります。 しかし、人格のない...

中途入社社員の残業単価の計算方法とは?

当社の給与支給日は、月末締め翌月25日払いです。 先日、月の途中に入社した社員から「残業代の計算が違うのではないか。残業単価も日割計算されてい...