当社は、本社の経営企画部門等において企画業務型裁量労働制を導入しています。
今年の4月に入社した新卒社員の研修がそろそろ終了し、本配属をしなければなりませんが、このような社員についても企画業務型裁量労働制の対象とすることはできるのでしょうか?
【この記事の著者】 定政社会保険労務士事務所 特定社会保険労務士 定政 晃弘
企画業務型裁量労働制を適正に導入するためには、次のような事業場、業務、労働者でなければなりません。
1.対象業務が存在する本社・本店や、当該事業場の属する企業等に係る事業の運営に大きな影響を及ぼす決定が行われる事業場などであること。
2.次のすべてに該当する業務であること。
①事業の運営に関する事項についての業務であること
②企画、立案、調査及び分析の業務であること
③当該業務の性質上これを適切に遂行するにはその遂行の方法を大幅に労働者の裁量にゆだねる必要がある業務であること
④当該業務の遂行の手段及び時間配分の決定等に関し使用者が具体的な指示をしないこととする業務であること
3.次のいずれにも該当する労働者の範囲に属する労働者であること。
①対象業務を適切に遂行するための知識、経験等を有する労働者
②対象業務を常態として従事している者
新卒で入社した社員の場合、職業に関する経験や知識がない、または乏しいことは明白です。
そう考えると、3-①には該当しないと考えられます。
また、社内研修を終えたとはいえ、業務を遂行する上で上司の指示を受けずに行うことは、すぐにはできないでしょう。
従って、2-③や2-④にも該当しないと判断されるでしょう。
【裁量労働制に関する記事はこちらも参考になさってください。】
・派遣社員にも裁量労働制を適用できるか?
・働き方改革における企画業務裁量労働制の注意ポイントとは?
平成11年12月27日に当時の労働省から出された指針でも、このような記載があります。
「例えば、大学の学部を卒業した労働者であって全く職務経験がないものは、客観的にみて対象労働者に該当し得ず、すくなくとも3年ないし5年程度の職務経験を経た上で、対象業務を適切に遂行するための知識、経験等を有する労働者であるかどうかの判断の対象となり得るものであることに留意すること」
指針であるため法的拘束力はありませんが、仮に入社3年に満たない社員(職務経験のある中途採用者を除く)に対して、企画業務型裁量労働制を適用していた場合は、労働基準監督署より指導される可能性が極めて高くなります。