先日、採用したばかりの社員から、「有給を1日前借りできませんか?」と相談がありました。
このようなケースは初めてだったので、「確認します」と言って回答を保留しました。
どのような対応が適切なのでしょうか。
【この記事の著者】 定政社会保険労務士事務所 特定社会保険労務士 定政 晃弘
最近の労働市場における慢性的な人材不足の影響もあるのでしょうか。
採用し、入社して間もない社員(つまり、ほとんどの場合が社員としての適性を試されている試用期間の社員)から「有給の前借りをしたいとの要望を受けているがどうしたら良いか?」というご相談を受けることが増えてきました。
会社によっては、入社と同時に一定の有給休暇を付与するところもありますが、そうでない場合は労働基準法の規定により、継続6か月間の勤務を経て初めて所定の年次有給休暇が付与されることは、ご承知のことと思います。
従って、継続6か月間の勤務の途中において、何らかの私的事情により勤務を休んだ場合は欠勤扱いとなり、その分の給与はカットされるのが通常です。
もっとも、試用期間中の社員の場合は欠勤により給与がカットされることよりも、勤怠不良等の判断を会社にされることにより、試用期間満了後の本採用を拒否されることの方がはるかにダメージがあるため、それならばと有給の前借り相談をしてくるのかもしれません。
そこで、どのような対応が適切なのか、検討していきたいと思います。
有給の前借りを認めると、今後、次のような問題が起きる可能性があります。
1.前借りを認め有給を実際に消化したものの、試用期間の満了を待たずして本人が退職してしまった。
2.前例を作ることで、今後、採用する者からも同様の要望が寄せられる可能性がある。
また、既存の社員で有給を使い切ったため残日数が0日となった場合でも、同様の要望が寄せられる可能性がある。
3.今回のようなケースにおいて、前借りし、有給も消化してから本来の付与日が到来した場合に付与すべき有給日数は「10日(本来の付与日数)-1日(前借り分)=9日」ではなく、「10日付与しなければならない」となる。
上記1の「本人が退職してしまった場合」だと、前借分を給与から控除してしまう会社があるようです。
しかし、