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希望退職の募集をする際どのような注意点があるのか?

希望退職とは、どういうものですか?
また希望退職を募集するときに注意しなければならないことは何ですか?

解説

経営の悪化など合理的な理由のもとで実施される希望退職は、通常よりも有利な条件を設定して退職希望を促すものだといえます。雇用調整を図るうえで、もっとも争いの少ないものとなる場合が多いでしょう。

会社側にとしては余剰人員の多い部門や、一定の年齢に達した従業員のみを対象として実施したいと考えますが、希望退職の募集は従業員のモティベーションを低下させてしまうおそれがあり、優秀な人材の流出というリスクもはらんでいます。そのため、会社側は全体からではなく削減したい部門や一定の条件を満たす者に限定して希望退職を実施したいと考えることがしばしばあるでしょう。

希望退職制度の場合、使用者の承認が優遇条件適用の前提となっているので、その募集は従業員からの雇用契約の合意解除の申込みの誘引(誘い)にすぎないと考えられます。よって、募集する範囲や人員を限定することは違法となることはありません。

ただし、承認するかどうかの判断においてはあまりにも不合理な差別的扱いなどを行えば違法となり、割増退職金の支払いを命じられる余地があるものと考えられます。(判例を参照)

判例

「ソニー(早期割増退職金)事件」(東京地裁判決 平成14年4月9日 労判829号56頁)

概要

Y社に係長として勤務していたX氏は、Y社に在籍したままA団体に正式に入社して、両社には二重在籍していることは伝えていなかった。

約1ヶ月間、有給休暇の取得を工夫し、勤務記録を不正に入力するなどしていたが、その後、早期割増退職制度の適用を申請し、退職願も承諾されていた。しかし、他社にも在籍していることが発覚。報告しなかったことを理由に、本件制度の適用は認めないとの通知が届いた。

結局、X氏には自己都合退社での退職金しか支払われなかったため、Y社の本件契約の締結拒否は権利の濫用等であるなどと主張して、特別加算金の請求などを訴えた。

東京地裁では、本件制度の申請は早期退職という重要な意思決定を伴うものであることからすると、適用申請者に適用を認めないことが信義に反する特段の事情がある場合には、Y社は信義則上、承認を拒否することができないと解するのが相当としたうえで、しかし、原告は二重就業の発覚を恐れ、勤務記録の不正入力を行っていた。その動機は早期退職による特別加算金が受けられなくなることを恐れてのことで不当というほかない。また、本件においては適用の承認拒否における特段の事情があるとは認められないとし、請求を棄却した。


希望退職とは、雇用調整を実施するに当たり、まずは労働者の自由意思による自発的な退職の申込みを募集することです。

退職金の増額、給料の上積み等、通常の退職の場合よりも有利な退職条件を提示することで、退職の募集へのモチベーションを高めるようにすることがポイントです。

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