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うつ病の社員を解雇することはできるのか?

うつ病の従業員を解雇することは可能でしょうか?

解説

私傷病の場合、治療をすれば回復の可能性がある病気であるにもかかわらず、治療のチャンスを与えずいきなり解雇すれば、「解雇権の濫用」(労働契約法16条)と判断される危険性があります。

過去の判例では、精神疾患のタクシー運転手に対して医療保護入院の後、回復の診断で職場復帰したにもかかわらず、暴言、奇行が頻発したために解雇したケースで裁判所は解雇を有効と判断しました。(判例を参照)その理由として、従業員が2度の入院治療を受けていること、退院後に継続的な治療が必要であったにもかかわらず途中で通院をやめていることがあげられました。

一方、うつ病が長時間労働やパワー・ハラスメント(以下、パワハラ)などの業務に起因する場合は業務災害になります。実際には複合的な要素が関係してくるので詳細は、「心理的負荷による精神障害の認定基準」(厚生労働省により平成23年12月から認定)によって判断することになります。たとえば、ひとつの目安として労働時間については、以下の基準があります。

  1. 部下に対する上司の言動が業務指導の範囲を超えており、人格や人間性を否定する言動が含まれ、かつこれが執拗に行われた。
  2. 同僚らによる多人数が結託しての人間性を否定するような言動が執拗に行われた。
  3. 治療を必要とする程度の暴行を受けた。

しかし、従業員のうつ病が私傷病か業務災害かの判断は使用者が判断せざるを得ません。過去の判例では、使用者が私傷病と判断したうつ病による解雇を不服とした従業員による訴えが一審、二審とも業務災害と認められ解雇が無効となったケースがあります。
(「東芝(うつ病・解雇)事件」東京高裁判決 平成23・2・23 労判1022号5頁)

判例

「東京合同自動車事件」(東京地裁判決 平成9年2月7日 労経速1655号16頁)

概要

タクシー乗務員だった原告のA氏は躁状態、妄想性状態などの精神疾患と診断されたため、会社によって医療保護入院の手続きがとられた。
その後、就労可能な程度まで回復したとの診断受けたことで被告であるT社はタクシー業務を許可した。

しかし勤務再開後、A氏は部長に対し罵詈雑言を浴びせたり、会社の代表者や管理職などに対して会社が家族をだまして自分を無理やり精神病院に入院させたとの手紙を何回も郵送。さらにはタクシー運転中に信号を確認せずに他車と接触する事故を起こし、事故処理の過程でも上司の注意を聞き入れず暴言を吐き、意味不明な発言、数々の奇行を繰り返した。

職場秩序を混乱させ、業務に支障をきたしたため、T社側は就業規則にある「精神若しくは身体に障害があるか又は虚弱、老衰、疾病のために業務に堪えないと認めたとき」に該当するとして、解雇予告手当を支給してA氏を解雇した。これを不服としたA氏が解雇無効確認と不法行為に基づく損害賠償を請求した。

東京地裁は、解雇時において原告がT社の就業規則に該当する状況は明らかだったとして、訴えを棄却した。


うつ病が私傷病(業務に起因しないもの)か、業務災害かによって違ってきます。

うつ病が業務に起因しない私傷病の場合、使用者としてまずは一度、欠勤や休職などによって治療の機会を与えるべきです。それでも回復の見込みがないならば普通解雇ができるかどうかの検討に入ります。
解雇が合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合には、その解雇は権利濫用にあたるとして無効になると定めていますので、慎重に検討することが必要です(労働契約法16条)。

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