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相続財産を遺贈寄附した場合の課税関係と節税方法

相続財産を法人へ寄附する場合、遺言により渡すケースと相続人が相続財産を取得し法人へ寄附するケースでは、相続税の課税関係が異なります。

寄附先の法人の種類によっては、寄附財産が非課税になる場合や、例外的に相続税が課されることもありますので注意が必要です。

【この記事の監修者】
讃良周泰税理士事務所 税理士 讃良 周泰

被相続人が遺贈により法人へ寄附した場合の相続税

相続税の対象となるのは個人であり、被相続人が法人へ遺贈した場合、原則遺贈された財産に相続税は課税されません。

寄附財産の遺贈は相続税の対象外になる

相続税法1条の3では、相続税の納税義務者は個人と定められており、個人は自然人をいいます。

法人は自然人ではありませんので、遺贈により法人へ財産が寄附された際、法人は納税義務者に該当しないため、相続税の対象から除かれます。

また相続税額を算出する際の課税価格は、納税義務者が取得した財産を合計した金額です。

法人への遺贈した財産が相続税の課税価格から除かれれば総額は減るため、相続人に課される税率が下がることもあります。

ただし法人には遺贈財産に対し法人税が課されますし、遺贈財産が不動産の場合、被相続人の準確定申告で譲渡所得税が課される可能性があります。

法人に対して相続税が課されるケース

相続人が法人へ遺贈した際、その法人が人格のない社団または財団に該当する場合は、当該法人を個人とみなし、相続税が課される可能性があります。

遺贈する目的が人格のない社団等を設立するための資金提供についても、被相続人の親族、特別関係者の相続税の負担を不当に減少する結果となると認められる場合、相続税の課税対象となりますのでご注意ください。

相続人が取得した財産を法人へ寄附した場合の相続税

相続人が取得した相続財産は基本的に相続税の対象ですが、特例を適用することで相続税が非課税になるケースもあります。

法人へ寄附した財産も原則相続税の課税対象

相続税は、相続が開始した時点で被相続人が保有していた財産に対し課税されます。

遺産分割協議で相続財産の取得が決まった場合、取得者は相続開始時点から相続財産を取得したことになり、取得後すぐに法人へ寄附したとしても、相続人が元々保有していた財産を寄附した場合と同じ扱いです。

そのため法人へ相続財産を寄附した場合でも、原則は相続財産を取得した時点で1度相続税は課されます。

国や地方、公益法人へ寄附した相続財産は非課税

相続人が取得した財産を公益法人などへ寄附した場合、一定の要件を満たすことで、『国等に対して相続財産を贈与した場合等の相続税の非課税等』(租税特別措置法70条)の規定を適用できます。

租税特別措置法70条(以下、措置法70条とする)は、相続や遺贈によって取得した財産を国、地方公共団体、公益を目的とする事業を行う特定の法人または認定非営利活動法人(認定NPO法人)に寄附した場合、寄附財産に対する相続税は課されない特例です。

特例を適用するためには、相続税の申告期限までに相続財産を寄附し、相続税の申告書に特例を適用する旨を記載しなければなりません。

非課税特例の適用要件

措置法70条の非課税特例を受けるには、次の要件をすべて満たす必要があります。

● 寄付先が国、地方公共団体、特定の公益法人または認定非営利活動法人(認定NPO法人)であること
● 相続や遺贈により取得した財産を寄附すること
(相続等で取得したとみなされる生命保険金・退職手当金も対象)
● 相続税の申告期限までに寄附していること

特定の公益法人および認定NPO法人の範囲

特例対象となる特定の公益法人は、科学または教育の振興に寄与するところが著しいと認められる公益法人等に限られます。

措置法70条は、寄附の時点で既に存在する特定の公益法人への寄附に限られ、特定の公益法人の設立のための寄附は認められていません。

<特定の公益法人の範囲>
● 独立行政法人
● 国立大学法人等
● 地方独立行政法人
(一定の要件を満たしたものに限られる)
● 公立大学法人
● 自動車安全運転センター、日本司法支援センター、日本私立学校振興・共済事業団
● 日本赤十字社
● 公益社団法人および公益財団法人
● 学校法人
(一定の要件を満たしたものに限られる)
● 社会福祉法人
● 更生保護法人

認定NPO法人へ寄附をする場合、寄附財産は認定NPO法人が行う特定非営利活動の事業に関連するものに限られます。

認定NPO法人とは、一定の基準を満たしたNPO法人のうち所轄庁(都道府県・政令市)が認めた法人をいい、「内閣府NPOホームページ」に認定NPO法人の名簿が掲載されています。

参考:NPO法人ポータルサイト(内閣府)

特例を適用する際に必要な手続き

措置法70条を適用する際の手続きは以下の3点に注意してください。

● 相続税の申告期限までに寄附
● 寄付先の法人等が発行した書類を取得
● 相続税の申告書に特例を適用する旨を記載

寄付先の公益法人などが発行する書類は、寄附を受けた年月日や財産などを証明する書類をいい、相続税の申告書に証明書を添付しないと特例は受けられません。
また証明書が発行された場合でも、他の要件を満たしていない場合、特例の対象外となります。

措置法70条の特例を適用できないケース

寄付先の法人が寄附財産を寄付を受けた日から2年を経過した日までに公益を目的とする事業用または、特定非営利活動に関する事業用として使用していない場合、特例は適用できません。

また寄附を受けた日から2年を経過した日までに、寄付先の法人が特定の公益法人などに該当しなくなった場合も特例の対象外となります。

そして財産寄付者や寄附した人の親族などが、寄付先の特定の公益法人を利用して特別な利益を受け、相続税または贈与税の負担が結果的に不当減少する寄附に該当した際も特例を適用できません。

遺贈寄附は誰が渡すかで課税関係は変わる

被相続人が自身の財産を法人へ遺贈寄附した際は、原則相続税は課税されません。

相続人が取得した相続財産を寄附する場合は、措置法70条の適用することで相続税は非課税になります。

しかし非課税特例を適用する際は、寄付先の法人等が発行する証明書を申告書に添付する必要があるため、寄付先の法人と連携し申告期限までに証明書を用意してください。

なお

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