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中小企業の貸倒引当金を考える

コロナ禍においては、今後、回収できない、または回収の可能性が低い債権、いわゆる不良債権が増加することも予想されます。

そのような場合は、貸倒損失や個別の貸倒引当金について検討せざるを得なくなります。

この記事では、税務上、中小企業にのみ認められる貸倒引当金について解説します。

【この記事の監修者】
讃良周泰税理士事務所 税理士 讃良 周泰

そもそも貸倒引当金とは?

まず、貸倒損失と貸倒引当金の違いを確認しておきましょう。

貸倒損失とは、金銭債権(売掛金、貸付金、未収金、立替金等)が、相手先の業績悪化等で法的に債権が消滅した場合などに、その金額を損益計算書に「損失」として計上するものです。

適正な理由により計上された貸倒損失は、法人の規模に関係なく税務上損金として認められます。

一方、貸倒引当金とは、将来発生することが予測される貸倒れの損失見込み額を損金経理により負債として繰り入れるものです。

貸倒引当金の繰入は、販管費や営業外費用として処理されます。

しかし、貸倒引当金が税務上認められるのは、普通法人のうち、資本金等が1億円以下の法人に限られます。

ただし、中小法人であっても大法人の子会社や公益法人等、金融機関や保険会社など貸倒引当金が税務上認められていない会社があります。

法人税法では、費用として認められるものは債務の確定したものに限られる(債務確定主義)ため、以前は税法に「別段の定め」を設けて一定の引当金を認めてきました。

しかし、この税法の引当金制度も、平成10年度の税制改正により引当金関係の大幅な改正が行われ、徐々に制度が廃止されました。

貸倒引当金についても、大企業は平成24年以降段階的に税務上廃止されました。

ただし、中小企業については実情を踏まえ、税務上も引当金制度が残っているのです。

貸倒損失は個々の金銭債権について検討しますが、貸倒引当金には次の2種類があります。
・個別評価金銭債権に係る個別貸倒引当金
・一括評価金銭債権に係る一括貸倒引当金

個別評価金銭債権とは?

個別評価金銭債権とは個別に貸倒引当金を設定するかどうかを判断する金銭債権であり、次の4種類があります。

個別貸倒引当金としてそれぞれの額を限度として繰り入れることができます。

長期棚上げ基準により算出した金銭債権
法的な負債整理により、5年超の期間における弁済額(取立見込額は控除する)

債務超過等により回収見込みのない金銭債権
概ね1年以上債務超過等が継続し、好転の見込がないことや災害等により、回収見込みのない金額(取立見込額は控除する)

形式基準による金銭債権
法的な負債整理の開始申し立てがあった場合の期末債権額(取立見込額は控除する)の50%

外国政府等に対する金銭債権
外国の公的債権等で長期にわたる不払いがあり、経済的価値が減少し、弁済を受けることが著しく困難である期末債権額(取立見込額は控除する)の50%

一括評価金銭債権とは?

一括評価金銭債権とは、個別評価金銭債権以外の期末時における金銭債権をいいます。

ただし、預貯金の未収利子、保証金、手付金、前渡金等は一括評価金銭債権の対象となりません。

一括評価金銭債権に係る貸倒引当金として繰り入れることができる金額は、次の繰入限度額までです。

※貸倒実績率は、過去3年間の平均貸倒率をいい、次の計算式で求めます。

さらに上記とは別に中小法人の繰入限度額の特例(租税特別措置法57の9)による繰入限度額があります。

上記の貸倒実績率と比較して有利選択が可能で、継続適用要件はありません。

*法定繰入率は次のとおり業種によって定められています。
・卸小売業    1,000分の10
・製造業     1,000分の8
・金融、保険業  1,000分の3
・割賦販売小売業 1,000分の13
・その他     1,000分の6

貸倒引当金の経理処理とは?

貸倒引当金繰入額として税法上認められるためには、

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