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会社をたたむ検討するタイミングと事業廃止する際の注意点

将来的に会社の廃業(解散)を検討している経営者が頭を悩ませるのが、会社をたたむタイミングです。

廃業する最適な時期は、会社の経営状態や経営者自身の状況によって異なりますが、事前に解散手続きや廃業時の必要費用を把握することで、計画的に会社をたたむことが可能になります。

本記事では会社を廃業する際の流れと、手続きを行う際の注意すべきポイントについて解説します。

【この記事の監修者】
讃良周泰税理士事務所 税理士 讃良 周泰

経営者が会社を廃業することを決断する時期

経営者は、次の要因が発生したタイミングで会社をたたむことを選択することが多いようです。

<経営者が会社をたたむ理由>
● 赤字で会社の資金繰りが困難になった
● 経営を引き継ぐ後継者の不在
● 会社の役目を果たした
● 事業規模を縮小し個人成りをする

<経営者が会社をたたむ理由>
● 赤字で会社の資金繰りが困難になった
● 経営を引き継ぐ後継者の不在
● 会社の役目を果たした
● 事業規模を縮小し個人成りをする

会社を運営する資金が無くなれば経営が困難になるため廃業せざるを得ませんし、会社経営が良好でも、経営者が身体を壊し会社運営できなくなった状況で後継者が不在であれば、会社をたたむことも検討しなければなりません。

会社を設立した目的を達成したなど、会社を存続させる理由が無い場合も会社をたたむ理由になりますし、個人成りをして活動するために廃業するケースもあります。

廃業する理由は一つとは限りませんが、廃業手続きを行う猶予がある段階から検討しなければ、スムーズにたたむことも難しくなります。

したがって現時点で抱えている問題点を出し、廃業することが最良である時に会社をたたむ選択をしてください。

会社をたたむ手続きの流れと必要費用

法人は個人事業とは違い、税務署などへの届け出以外に登記手続きが必要ですし、登記手続きなどには費用がかかります。

会社解散・清算に必要な手続き

会社をたたむためには、会社を解散させ清算決了の登記を完了させる必要があります。

解散の決定は株主総会を経る必要があり、株主の同意が無ければ会社をたたむことはできません。

解散決議が可決されましたら、廃業するための役所手続きと実務手続きを行います。

役所手続きは、清算人の選定や役所への届出書の提出、そして清算決了の登記手続きなどがあります。

清算会社は解散した日から2か月以内に法人税の確定申告書の提出が必要で、残余財産が確定した際も1か月以内に清算確定申告書を提出しなければなりません。

実務手続きとしては、会社の財産の処分や債権回収、債務弁済があり、会社の資産を清算して残余財産がある場合、株主へ分配を行います。

一連の手続きが終了したら清算決了登記を行い、税務署や市区町村などの公的機関へ解散届を提出することで、会社を完全にたたんだことになります。

会社をたたむ際に発生する費用

会社をたたむのに必要な費用の種類と、目安となる金額は次の通りです。

<会社の解散手続き費用>
費用の種類 / 目安金額
● 解散登記費用 / 3万円
● 清算人の選任登記費用 / 9千円
● 清算決了の登記費用 / 2千円
● 官報公告の掲載費用 / 4万円前後
● 登記事項証明書等の取得費用 / 数千円

<会社の解散手続き費用>
● 費用の種類 / 目安金額
● 解散登記費用 / 3万円
● 清算人の選任登記費用 / 9千円
● 清算決了の登記費用 / 2千円
● 官報公告の掲載費用 / 4万円前後
● 登記事項証明書等の取得費用 / 数千円

これらの支出は登記手続きなどで必ず支払うことになる費用であり、登記手続きを司法書士へ依頼する場合や、税理士に確定申告手続きを依頼する際は報酬費用が別途発生します。

また従業員を雇っている場合には、従業員の処遇を含めた対応・手続きが必要となりますが、専門家と対応方法について事前に協議するのであれば、追加で報酬費用がかかります。

会社をたたむ際の注意事項

会社の解散には2か月以上かかる

会社をたたむためには、株主総会などの手続きが必要となるためすぐに廃業することはできません。

解散決議がされましたら2週間以内に法務局へ解散登記および、清算人の選定登記を行います。

清算人は会社の財産を確認し、財産目録等を作成するなどの作業を行うことになり、清算人には会社の代表者が就任することが多いです。

また解散した事実を周知して債権者に名乗り出てもらうために、官報公告を2か月以上掲載する必要があるため、会社をたたむ決断をしてから廃業するまで、最低2か月以上かかります。

資産の処分や債権回収には時間を要する

残余財産を確定させるために、会社名義の不動産や株式、機材などは処分し、債権回収もしなければなりません。

不動産を即座に売却することは難しいですし、在庫の数量によっては処分するのに時間を要します。

また債務がある場合は弁済することになりますが、官報に解散公告を掲載している場合、掲載期間が終わるまで債務弁済はできません。

登記手続きは計画的に進めることは可能ですが、資産の処分や債権回収、債務弁済は相手がいる話なので、予定通りに作業が進まないことも想定されます。

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居住用財産の買換え特例の適用要件および引き継ぐ取得価額の計算方法

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