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過大役員給与の判定基準と損金不算入にならないためのポイント

法人の役員給与は、一定の要件を満たせば損金算入できますが、役員給与が過大とみなされた場合、損金に算入することができなくなるのでご注意ください。

本記事では、役員給与が損金不算入になるケースと、過大役員給与の判定基準について解説します。

【この記事の監修者】
讃良周泰税理士事務所 税理士 讃良 周泰

役員給与の損金算入・不算入の取扱い

法人税法第34条(役員給与の損金不算入)では、役員給与の損金不算入について定められており、役員給与の損金算入が認められるのは、次のいずれかに該当するケースです。

<役員給与の損金算入が認められるケース>
・定期同額給与
・事前確定届出給与
・利益連動給与

「定期同額給与」とは、支給時期が1か月以下の一定期間ごとの給与の支給額が同額であるものをいい、支給額が上下してしまうと損金算入が認められません。

役員に毎月同じ金額を支払っている場合でも、支給した額が不相当に高額だと判断されると、その部分の金額は損金不算入となります。

「事前確定届出給与」とは、役員への給与の支給額・支給時期を定め、事前に税務署へ届出書を提出している給与をいい、手続きを行えばボーナスも損金に算入することが可能です。

「利益連動給与」とは、会社の業績に応じて役員給与の支給額を決めるものをいい、指標等により算出された給与は損金に算入できます。

なお法人が事実を隠蔽したり、仮装による経理で支給したりした役員給与は、損金不算入となるのでご注意ください。

過大役員給与の判定基準

過大役員給与の判定基準は「実質基準」と「形式基準」があり、法人税法施行令第70条に定められています。

実質基準

実質基準とは、役員への報酬が実態に見合った対価として支払われているかを判断する基準をいいます。

次の4要素を総合的に勘案して妥当性を判断し、役員給与が過大と判断された場合、その部分の金額は損金不算入となります。

<実質基準の判断要素>
・会社の経営状態
・役員の仕事内容
・使用人に対する給与の支給状況
・同業他社の役員給与

同族会社などの中小企業では、オーナー一族が役員として名を連ねていることもありますが、勤務実態に見合わない報酬を役員に支払っていると、損金不算入になる可能性が高いです。

使用人に対する報酬と比較し、報酬が著しく高い場合も過大役員給与と認定されることがあります。

また、実質基準は同業他社の役員給与も調べなければなりませんが、過大役員給与とみなされる具体的な金額基準はありません。

そのため、税務調査で指摘されないためにも、役員給与として支給する額が適切である根拠を示せるようにしてください。

形式基準

形式基準とは、定款の定めや株主総会の決議内容に基づき、役員給与が支払われているかを判断する基準です。

役員に対する給与として支給することができる金額の限度額を定めている場合、限度額を超えて支給した役員給与のうち、超過した部分の額は損金不算入となります。

事業年度で支払う役員給与の総額を定めている場合には、総額を超えた部分が過大役員給与とみなされます。

また個々の役員に報酬額の上限を定めているときも同様に、限度額を超えた部分は損金不算入となるので注意してください。

同業他社の報酬額と比較する際の注意点

実質基準で役員給与の額を判断する場合、比較対象となる同業他社の選定も重要です。

同業種であっても、事業規模が異なれば報酬金額も違いますので、自社と同程度の事業規模の会社の役員給与と比較しなければなりません。

選定の合理的な方法としては、「倍半基準」があります。

倍半基準とは、会社の事業規模を示す指標(売上高、利益額、総資産額など)が0.5倍以上2倍以下の範囲を対象に抽出する基準です。

抽出規模の選定方法として倍半基準を用いることは裁判でも容認されていますが、売上規模など特定の指標のみで同業他社を抽出選定した場合、税務署から指摘される可能性がありますので、総合的に判断する必要があります。

同業他社の報酬額等については、国税庁が公表している「民間給与実態統計調査」や人事院の「民間給与の実態」など、公的な資料を参考にするのも一つの方法です。

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