組織再編の方法はいくつもありますが、複数の会社の経営をまとめたい場合には持株会社の設立も選択肢になります。
本記事では、持株会社を用いて組織再編を行うメリット・デメリットと、移行する際の税務上の注意点について解説します。
目次
持株会社(ホールディングカンパニー)の概要
持株会社とは、複数の会社を保有する目的で株式を保有する組織形態です。
以前の日本では持株会社の設立は禁止されていましたが、平成9年(1997年)6月の法改正で持株会社が設立できるようになりました。
持株会社には、「事業持株会社」と「純粋持株会社」の2種類あります。
事業持株会社は、親会社が子会社の株式を保有しながら、親会社自身も事業者として活動をしている会社です。
株式交換により持株会社となった場合には、組織再編後も従来の事業を継続することになりますので、そのようなケースにおける持株会社は「事業持株会社」に該当します。
純粋持株会社は、子会社の株式を持つことを目的とする会社です。
子会社の事業活動を支配・コントロールすることが事業目的なので、自らが販売や製造といった事業を行うことはありません。
また、金融関係の企業が設立する金融持株会社についても、純粋持株会社の一つです。
持株会社のメリット・デメリット
持株会社は業種問わず設立されていますが、設立にはメリットだけでなくデメリットもあるので注意してください。
メリット1:経営権を持株会社に集約できる
持株会社の大きなメリットとして挙げられるのが、経営権の集約です。
会社ごとに株主が異なる場合、統一感を持って事業を展開することが難しいですが、持株会社を設立して関連会社を子会社化すれば、同じ経営方針の下で運営することができます。
組織再編後も関連会社を子会社として存続させれば、独自採算による経営を行えます。
独自採算は経営状態を透明化するメリットだけでなく、業績次第で子会社を切り離して売却することも可能です。
メリット2:相続による株主の分散化の防止
経営者に相続が発生した場合、会社株式を誰が取得するかが大変重要です。
被相続人が複数の会社を経営していれば、会社ごとに後継者を指名し、株式を引き継がせなければなりません。
ただ事業を引き継ぐ前に相続が発生してしまうと、後継者争いで揉める可能性がありますし、後継者以外の相続人が株式を相続する権利を主張することも考えられます。
株式の取得者が分散すれば経営が不安定になることも懸念されますが、相続前に持株会社に移行していれば、持株会社の株式を相続するだけでグループ会社の経営権を握ることができます。
デメリット1:持株会社に移行する際に課税が生じる
持株会社を設立するためには、現在保有している子会社の株式を持株会社に譲渡しなければなりません。
株主である経営者が株式を譲渡するとなれば、譲渡所得の対象となり、利益に対して約20%の譲渡所得税が課されます。
また持株会社に移行する際に、法人同士で資産移転を行う際も譲渡損益の計算をしなければならず、計算上の利益が発生していれば法人税が課される可能性もあります。
デメリット2:持株会社の運営コストが発生する
複数の会社を子会社にする際には、登記等の手続き費用がかかりますし、人事関係の労力も伴います。
純粋持株会社の場合、親会社は子会社の株式を保有するだけで事業を行うことがありませんので、持株会社を設立した分だけ運営コストが発生します。
経営の効率化により運営コストの圧縮も期待できますが、効率化を達成できなければ持株会社を設立したことで維持管理費が増える可能性があります。
持株会社設立による組織再編成時の課税上の問題
持株会社を設立して組織再編を行う場合、株式などの資産移転が行われます。
法人税においては、組織再編時における対象法人間の資産の移転の際に課税が生じることがあるので注意してください。
原則的な課税上の取扱い
適格組織再編成に該当しない組織再編成は「非適格組織再編成」に該当し、組織再編時の資産移転時に課税関係が生じます。
合併や株式交換等により資産移転を行う場合、譲渡損益を計算することになります。
譲渡損益は、移転前の資産価値である簿価と移転する際の価値である時価の差額により算出し、簿価よりも時価の方が大きい場合には差額を譲渡益として計上しなければなりません。