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相続税・贈与税の新しいマンション評価方法と改正に伴う影響

令和5年6月30日、国税庁は相続税・贈与税で用いるマンション評価額の新たな算出方法を公表しました。

評価方法が改正されたことで、いわゆる「タワマン節税」の効果が下がるだけでなく、一般のマンションの評価額にも影響が及ぶ可能性があります。

本記事ではマンションの評価方法が改正される理由と、新しい評価方法のポイントについて解説します。

【この記事の監修者】
讃良周泰税理士事務所 税理士 讃良 周泰

国税当局がマンション評価方法を改正した理由

国税当局がマンション評価方法を見直すことになった要因の一つに、タワマン節税を問題視していたことが挙げられます。

タワマン節税は、保有している金融資産をタワーマンション(高層マンション)に替えることで相続税の計算上の財産価値を圧縮する方法で、近年用いられることが多くなっている相続税対策です。

不動産の相続税評価額は時価の8割程度とされていますが、タワーマンションの相続税評価額は時価の3割程度になるケースもあるため、タワーマンションを購入すれば資産を減らさずに相続税評価額を7割も下げることができました。

しかし、令和5年度与党税制改正大綱において「相続税におけるマンションの評価方法については、相続税法の時価主義の下、市場価格との乖離の実態を踏まえ、適正化を検討する。」と明記されたことに伴い、国税庁はマンションの相続税評価の見直しをすることに決定しました。

マンションの相続税評価額が市場価格と乖離する要因

マンションの相続税評価額と市場価格に乖離が発生するのは、現在の評価額の算出方法がマンションの価値を適切に反映させていないことが要因とされています。

建物の相続税評価額は、再建築価格をベースに算定します。

建物が戸建てであれば、再建築価格をベースにした評価方法でも問題が起きることは少ないです。

しかし、マンションの建物部分の市場価格は、建物としての価値だけでなく、建物の総階数や評価対象となるマンション一室の所在階も考慮されており、再建築価格をベースした評価方法では建物の効用が十分に反映されていません。

土地の相続税評価額は、路線価等に面積を乗じて算出することになり、マンション一室に対する敷地利用権を評価する場合も計算方法は同じです。

ただタワーマンションは、階層が多いマンションほど敷地利用権が細分化されてしまうことから、評価額を計算する際に用いる面積が狭小になりやすくなります。

1㎡当たりの単価が適正であったとしても、面積が小さければ市場価格に比べて相続税評価額は低く算出されてしまうため、土地の相続税評価額の計算においては、立地条件の反映が不十分であることが指摘されています。

相続税における新しいマンション評価方法

新しいマンションの相続税評価額の計算方法は下記の通りであり、令和6年1月1日以後の相続・贈与により取得した財産から適用される見込みです。

<改正後のマンション評価方法>
現行の相続税評価額 × マンション一室の評価乖離率(※) × 0.6(最低評価水準定数)=相続税評価額

※評価乖離率の算出方法
①×△0.033+②×0.239+③×0.018+④×△1.195+3.220

①:対象マンションの建物の築年数
②:対象マンション建物の「総階数指数(総階数÷33)」
  (1.0を超える場合は1.0)
③:対象マンション一室の所在階
④:対象マンション一室の「敷地持分狭小度」として、「当該マンション一室に係る敷地利用権の面積÷当該マンション一室に係る専有面積」により計算した値

評価乖離率と最低評価水準は、固定資産税の評価の見直し時期に併せて、当該時期の直前における一戸建ておよび、マンション一室の取引事例の取引価格に基づいて見直します。
マンション市場価格の大幅な下落その他見直し後の評価方法に反映されない事情が存することにより、改正後の評価方法に従って評価することが適当でないと認められる場合には、個別の評価方法を用いる旨が明確化されます。

新しい評価方法の対象になるマンションの種類

新しい評価方法の対象になるのは、次のいずれにも該当しないマンションです。

・評価乖離率が0.6分の1以下(約1.67以下)となるマンション一室
・マンション一室が総階数2階以下の物件に係る各部分および、区分所有されている居住用部分が3以下
・マンション一室すべてが親族の居住用である物件(いわゆる二世帯住宅等)に係る各部分に該当

評価乖離率が0.6分の1以下(約1.67以下)のマンション一室については、現行の相続税評価額をそのまま用いることになり、評価乖離率が1.0未満となるマンション一室は、「現行の相続税評価額×当該マンション一室の評価乖離率」で評価額を算出します。

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