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遺産分割のしかたの違いによる相続税・譲渡所得税への影響

相続が発生した場合、相続人全員が話し合って遺産の分け方を決めます。

遺産分割の手段はいくつか存在し、分割方法によって相続税と譲渡所得税の課税関係が変わることがあるため、今回は各遺産分割方法の特徴と課税上の注意点について解説します。

【この記事の監修者】
讃良周泰税理士事務所 税理士 讃良 周泰

遺産分割の種類

遺産分割の方法は、現物分割・共有分割・換価分割・代償分割の4種類です。

現物分割は、相続財産をそのまま分ける方法をいい、財産ごとに取得者を決めます。

共有分割は不動産などの財産を複数の相続人で取得する分割方法で、不動産を相続人共有で相続する場合などに用いられます。

換価分割は相続財産を処分し、売却代金を各相続人で分ける方法で、相続財産を法定相続分で分けることが難しいときに用いられることが多いです。

代償分割は特定の相続人が相続財産を取得する代わりに、他の相続人に対して相続分相当の金銭を支払う方法です。

相続人全員が同意してれば、いずれの分割方法を用いて遺産を分けたとしても問題はなく、財産の種類ごとに異なる分割方法を用いることも認められています。

現物分割による相続税・譲渡所得税への影響

相続税は取得した財産の割合に応じて相続税を負担することになるため、相続税の総額が100万円の場合、全体の60%の財産を取得した相続人は60万円を支払うことになります。

現物分割は財産ごとに取得者を決めますので、誰がいくら遺産を取得したのか明確です。

現金・預貯金を取得した相続人であれば、取得した財産から相続税の納税資金を捻出できますが、不動産など現金化が難しい財産を取得した相続人は、納税資金の確保に苦慮することが想定されます。

相続税は現金一括納付が原則であることから、相続財産を処分して納税資金を作ることも選択肢です。

ただし、不動産や株式などの資産を売却した際は、譲渡所得税の課税対象となるので注意してください。

譲渡所得税は売却益に対して課される税金であり、先代の取得費や所有期間を引き継いで売却益の計算を行います。

相続した土地を売却する場合、先代が購入した金額が売却代金よりも大きければ譲渡所得税は発生しませんが、先祖代々承継してきた土地は取得費が不明であることも多いので、計算上の売却益が算出されます。

共有分割による相続税・譲渡所得税への影響

共有分割で取得した相続財産については、持分に応じて財産を取得したものとして相続税の計算を行います。

相続税には節税効果の高い特例制度がいくつも存在し、たとえば土地に対して適用できる小規模宅地等の特例は、土地の相続税評価額を最大80%減額することが可能です。

ただ小規模宅地等の特例は、取得者ごとに適否判定を行わなければならず、共有分割で土地を取得した場合、特例を適用できる部分とできない部分が出てくることが考えられます。

また、不動産を売却した場合には、所有者ごとに所得税の申告手続きが必要です。

相続人が被扶養者の場合、譲渡所得が発生したことで扶養対象から除かれるケースもあることから、相続後すぐに売却する際は共有分割ではなく代償分割など別の方法で相続することも検討してください。

換価分割による相続税・譲渡所得税への影響

換価分割は売却した相続財産の代金を相続人で分けることになりますが、相続税においては、各相続人が売却代金を分ける割合で相続財産を取得したものとみなして計算を行います。

相続税の特例要件は共有分割と同様、相続人ごとに判定することになるため、特定の相続人しか適用要件を満たしていない場合、その相続人に対象財産をすべて取得させることも選択肢です。

不動産は換価分割のための売却であっても、亡くなった人の名義のまま売買することはできないため、便宜的に特定の相続人名義で登記手続きをすることになります。

登記上は1人の相続人が単独で不動産を売却する形となりますが、換価分割のための不動産売却であれば、売却資金を受け取る割合で各相続人が売却した扱いになるため、各人が所得税の申告手続きをしなければなりません。

代償分割による相続税・譲渡所得税への影響

代償分割で遺産を分ける場合、相続財産を取得した相続人は相続財産の評価額から代償金を差し引いた額が取得した財産の総額となります。

代償金を受け取った相続人は、代償金が相続により取得した財産の額となるため、相続財産を直接受け取らなかったとしても、相続税を支払うことになる可能性はあります。

代償分割により取得した不動産を売却する場合、現物分割と同様に先代の取得費・所有期間を引き継ぎますが、支払った代償金を譲渡所得の取得費に計上することはできません。

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