株式交換は組織を再編成する際に用いられる手法の一つですが、適格株式交換に該当する場合には、組織再編時の税負担を軽減することができます。
本記事では、株式交換の概要と税制適格・非適格の違いおよび、適格株式交換の適用要件について解説します。
【この記事の監修者】
讃良周泰税理士事務所 税理士 讃良 周泰
目次
株式交換による組織再編の概要と特徴
株式交換は、株式会社が対象会社を100%子法人にするために用いる方法です。
完全親法人となる会社は、対象会社の発行株式をすべて取得することになりますが、株式を対価に買収を行えば、買収資金を用意せずに完全子法人化することが可能です。
対象会社は株式交換後も法人として存続しますし、対象会社の株主の3分の2以上が完全子法人化に賛同すれば株式交換を実施できます。
また、親会社が株式を有していることから、計画的に経営統合を進められるのも株式交換のメリットです。
一方で、親法人が上場会社の場合、株式交換が好意的に受け止められなかったときに株価が下落するリスクがあります。
株式交換は新株を発行して対象会社を子法人化する関係上、親法人の株主構成が変化することによる経営面への影響も懸念されます。
適格株式交換と非適格株式交換の違い
株式交換は、適格要件を満たした「適格株式交換」と、適格要件を満たしていない「非適格株式交換」の2種類に区分されます。
非適格株式交換で組織再編を行った場合、組織再編時に株式を時価で売買したことになるため、簿価よりも時価が高いときは譲渡益が発生します。
それに対し、適格株式交換は帳簿価格をそのまま引き継ぎ、譲渡損益等の課税関係は繰り延べになりますので、組織再編時の税負担を軽減できるのが大きな特徴です。
適格株式交換の要件は状況によって変化する
適格株式交換の対象となる株式交換の要件は、以下の3パターンです。
親法人となる会社と子法人となる対象会社の関係性によって適用要件が異なり、関係性が緊密であるほど適格要件は満たしやすいです。
・完全支配関係がある法人間で行う株式交換
・支配関係にある法人間で行う株式交換
・共同で事業を行うための株式交換
支配関係は、対象会社の発行株式を50%超保有している支配法人と対象会社との関係をいい、支配法人が対象会社の発行株式を100%保有している場合には「完全支配関係」になります。
支配関係のない法人同士の株式交換についても、「共同で事業を行うための株式交換」の要件を満たす場合には、適格株式交換として組織再編を行うことができます。
完全支配関係における適格株式交換の要件
親法人と子法人が完全支配関係の場合における適格要件は、金銭等不交付要件と継続保有要件の2点です。
金銭等交付不要件は、株式交換を行う際の対価を株式に限定する要件です。
一定の条件を満たしているときは、金銭等を対価にすることが認められるケースもありますが、原則は合併法人等の株式を対価にしなければなりません。
継続保有要件とは、株式交換をした後でも相互関係を継続することをいいます。
たとえば会社同士が株式交換前に完全支配関係にある場合、株式交換後も同様の関係を維持しなければなりません。
支配関係における適格株式交換の要件
株式保有率が50%超の支配関係にある場合の適格株式交換の要件は、以下の4点です。
・継続保有要件
・事業移転要件
・事業継続要件
金銭等不交付要件と継続保有要件は完全支配関係における株式交換と同様ですが、支配関係における適格株式交換については、事業移転要件と事業継続要件が追加されます。
事業移転要件は、従業員の雇用に関する要件です。
完全子法人となる会社の従業員のうち、概ね80%以上は株式交換後も引き続き業務に従事させなければいけません。
事業継続要件は、株式交換後も完全子法人の事業を継続させることをいいます。
共同事業における適格株式交換の要件
共同事業における適格株式交換の適用要件は、以下の7点です。
・継続保有要件
・事業移転要件
・事業継続要件
・継続支配要件
・事業関連性要件
・選択要件
共同事業における適格株式交換の特有の要件としては、継続支配要件・事業関連性要件・選択要件があります。
継続支配要件は、株式交換により実現した完全支配関係を継続することをいいます。
事業関連性要件は、株式交換後の事業が親法人と子法人の関連するものであることをいい、事業に親子法人の関連性がない場合には適格要件を満たさなくなるので注意が必要です。
選択要件は、「同等規模要件」と「双方経営参画要件」のいずれかを満たすことが求められます。
同等規模要件は、親法人と子法人の売上高や従業員を概ね5倍以内にするもので、会社の規模に大きな差異を生じさせないようにするための措置です。
双方経営参画要件は、株式交換に伴い子法人の特定役員全員の退任を禁止するものです。
子会社の特定役員が1名でも残っていれば要件は充足し、特定役員に該当する役員は下記の通りです。
・副社長
・代表取締役
・代表執行役
・専務取締役
・常務取締役
・これらに準ずる者のうち、法人経営の中枢に参画している者