税額控除ができる制度として「所得拡大促進税制」というものがあると知りました。
詳しい内容を教えてください。
【この記事の監修者】 讃良周泰税理士事務所 税理士 讃良 周泰
「所得拡大促進税制」とは、当事業年度の雇用者給与等支給額が基準年度及び前事業年度より増加した場合に法人税から税額控除できる制度です。
税制改正により延長される可能性はありますが、平成29年度が適用できる最後の事業年度となる可能性が高くなっています。
なお、平成29年度から中小企業は拡充され、大企業は縮小されています。
中小企業の場合、1人当たり平均の継続雇用者給与等支給額が前事業年度よりも2%以上増加すると、控除税率が12%加算されます。
また、増加率が2%未満でも、控除税率は10%のまま据え置かれています。
大企業の場合、平成28年度以前は2%未満でも増加さえしていれば適用できたのですが、平成29年度からは、1人当たり平均の継続雇用者給与等支給額が前事業年度よりも2%以上上回っていないと適用できなくなりました。
【税額控除額】
1人当たり平均の継続雇用者給与等支給額が前年度よりも2%以上上回っているかどうかで控除税率は変わってきます。
「平成29年度」
(1)前年度より2%未満
基準年度より増加した雇用者給与等支給額 × 10%
(大企業は適用不可)
(2)前年度より2%以上
イとロの合計額となります。
イ:基準年度より増加した雇用者給与等支給額 × 10%
ロ:基準年度より増加した雇用者給与等支給額又は雇用者給与等支給額が前年度より増加した金額のいずれか少ない金額 × 22%(大企業は12%)
「平成28年度以前」(中小企業者等及び大企業に共通)
基準年度より増加した雇用者給与等支給額 × 10%
【控除限度額】
法人税の20%(大企業は10%)
【適用要件】
次の要件①~③のすべて満たす必要があります。
要件①:雇用者給与等支給額が基準年度より一定以上の増加
・中小企業者等:3%
・大企業:平成28年度は4%、平成29年度は5%
要件②:雇用者給与等支給額が前事業年度より増加していること
要件③:1人当たりの平均の継続雇用者給与等支給額が一定以上超えていること
・中小企業者等:前年度より増加
・大企業:前年度より2%以上増加
【前事業年度以前に従業員がいない場合の特例】
前事業年度以前に雇用者給与等支給額がない場合でも税額控除の適用が受けられます。
1.当事業年度に開業・設立した場合
(1)雇用者給与等支給額の増加額:平成29年度の金額 × 30%
(2)控除税率:10%
2.平成28年度以前に開業・設立している企業が当事業年度に初めて雇用した場合
(1)雇用者給与等支給額の増加額:当事業年度の金額 - 1円
(2)控除税率:平成29年3月31日までに開始した事業年度は10%
平成29年4月1日以降に開始した事業年度は22%
3.適用要件の特例
・中小企業者等:要件①~③まで自動的にクリア
・大企業:要件③に満たないため適用不可
【雇用者給与等支給額の計算範囲】
賃金台帳に記載されている国内雇用者に対する給与等の金額(所得税法上の給与所得と通勤手当の合計額)です。
ただし、給与等を補てんする目的の助成金は控除されます。
【継続雇用者給与等支給額の計算範囲】
前事業年度、当事業年度ともに給与の支給を受けている雇用保険加入者のうち、一般被保険者(主にフルタイムかつ65歳未満の従業員)に限定されます。
【雇用者給与等支給額から除外される対象者】
1.役員など雇用保険未加入者
2.雇用保険の被保険者のうち、役員との特殊関係にある従業員、使用人兼務役員、国外で勤務している従業員
3.役員との特殊関係
民法上の親族(6親等以内の血族と3親等以内の姻族)、事実婚などにより生計の支援を受けていること
【基準年度】
原則は平成24年度です。
平成25年度以降に開業・設立した場合には、最も古い事業年度が基準年度になります。
【中小企業等の範囲】
次の要件をすべて満たす企業です。