消費税の課税事業者が高額特定資産を取得した場合の特例制度について教えてください。
【この記事の監修者】 讃良周泰税理士事務所 税理士 讃良 周泰
目次
1.高額特定資産を取得した場合の特例制度の概要
消費税の課税事業者が高額特定資産を取得し、または自己建設高額特定資産の建設等を行ない、仕入税額控除(課税仕入れに対する消費税)を実額で計算した場合には、平成28年度の税制改正により次の事業年度から3年間は「免税事業者になること」や「簡易課税制度の適用が受けられない」という制限が設けられました。
(1)高額特定資産を取得した場合
高額特定資産を取得した事業年度
(2)自己建設高額特定資産を建設した場合
自己建設高額特定資産の建設等が完成した事業年度
2.高額特定資産および自己建設高額特定資産とは?
(1)高額特定資産
一つの取引につき、税抜き1000万円以上の商品や原材料などの棚卸資産、固定資産をいいます。
また、1000万円以上かどうかの判定は棚卸資産や固定資産の種類別に行ないます。
「棚卸資産」
不動産業者が購入した売却目的の建物など
「固定資産」
1台・1式・1組単位で1000万円以上の設備など
(たとえば、機械700万円、建物800万円、計1500万円でも高額特定資産には該当しません)
(2)自己建設高額特定資産
建売販売用の住宅(棚卸資産)や社屋(固定資産)の建築などに要した費用が、累計で1000万円以上となった場合。
3.高額特定資産と調整対象固定資産の異同点
調整対象固定資産とは、1台・1式・1組単位の固定資産で税抜き100万円以上のものをいいます。
(1)共通点
調整対象固定資産を取得し、仕入税額控除を実額で計算した場合には、取得した事業年度から3年間は免税事業者になれず、また簡易課税制度の適用が受けられません。
(2)異なる点
・対象事業者が「課税事業者となることを選択した事業者」又は「資本金1000万円以上の法人を設立した場合(新設法人)」に限定され、最初の1期、2期目に調整対象固定資産を取得した場合に限られます。
したがって、3期目以降に取得しても、免税事業者になることや簡易課税制度の適用を受けることに制限はありません。
・調整対象固定資産の場合、対象資産に棚卸資産が除かれています。
4.高額特定資産や自己建設高額特定資産の特例制度が設けられた背景
仕入税額控除を合法的に二重控除していることが会計検査院から指摘されたことより、平成28年度の税制改正で特例制度が創設されました。
そのきっかけは、3期目以降に数十億円という不動産の購入を活用した節税スキームです。
「購入した事業年度」
不動産の購入代金に対して仕入税額控除を行ない、消費税の還付を受けるよう適用する。
(購入した事業年度は多額の消費税を支払うため、預かった消費税より支払った消費税の方が多くなることから、消費税の還付を受けることができます)
「購入した翌事業年度以降」
簡易課税制度を選択して、課税売上高をベースに、みなし仕入率で計算し、仕入税額控除を適用する。
また、簡易課税を選択することにより不動産を購入してから3年目の仕入れ税額控除の調整計算を回避できる。
要するに