契約書のひな形、内容証明郵便書式、労務書式、
会社法議事録・通知書のテンプレートが無料

遺留分侵害額請求が行われた際の相続税・贈与税の申告・更正手続き

遺留分権利者は、被相続人が財産を遺留分権利者以外に贈与または遺贈したことで、遺留分に相当する財産を取得できなかった場合、受贈者または受遺者に対して遺留分侵害額の請求をすることができます。

遺留分侵害額の支払請求が行われた場合、当事者となった相続人等は期限後申告または修正申告、更正の請求手続きをすることになりますが、相続税だけでなく、贈与税の手続きを要する可能性もあるので注意してください。

本記事では、遺留分侵害額の支払請求が行われた際の相続税および、贈与税の手続き方法について解説します。

【この記事の監修者】
讃良周泰税理士事務所 税理士 讃良 周泰

遺留分侵害額の支払請求があった際の相続税の計算

遺贈が遺留分を侵害するとして、遺留分侵害額の支払請求が行われた場合、該当する相続人等は次の区分に応じて相続税の課税価格の合計額を計算することになります。

  • ・遺留分権利者(金銭の支払いを受ける相続人)
    相続または遺贈により取得した現物財産の価額+遺留分侵害額に相当する価額
  • ・遺留分義務者(金銭を支払う受遺者)
    相続または遺贈により取得した現物財産の価額-遺留分侵害額に相当する価額

「遺留分侵害額に相当する価額」は、原則相続開始時点の時価としますが、相続税法基本通達11の2-10「代償分割の価額」に準じて計算しても差し支えありません

遺留分侵害額の支払請求の基因となった遺贈に係る財産が特定され、その財産の相続開始時における通常取引価額を基に遺留分侵害額が決定されている場合には、次の計算式で求めた額を「遺留分侵害額に相当する価額」とします。

<計算式>
遺留分侵害額×(A÷B)=遺留分侵害額に相当する価額
A:遺留分侵害額の支払請求の基因となった遺贈に係る財産の相続開始時の価額(相続税評価額)
B:遺留分侵害額の支払請求の基因となった遺贈に係る財産の遺留分侵害額を決定する基となった相続開始時における価額(時価)

遺留分侵害額の支払請求の基因となった遺贈に係る財産に対して、小規模宅地等の特例が適用されていた場合、遺留分侵害額に相当する価額を計算する際の分子の金額は、小規模宅地等の特例を適用する前の宅地等の価額で計算します。

贈与が遺留分侵害の対象となった場合の取扱い

遺留分の侵害は遺贈だけでなく贈与も対象となりますので、生前贈与が遺留分の侵害に該当する場合には、贈与税の計算にも影響を及ぼします。

遺留分義務者に対する贈与税の取扱い

贈与が遺留分侵害したと判断された場合、遺留分義務者は贈与により取得した財産の価額から、遺留分侵害額に相当する価額を控除した価額を課税価格として計算します。

「遺留分侵害額に相当する価額」は、次の算式により求めます。

<計算式>
遺留分侵害額×(A÷B)=遺留分侵害額に相当する価額
A:遺留分侵害額の支払請求の基因となった贈与に係る財産の贈与時の価額(相続税評価額)
B:遺留分侵害額の支払請求の基因となった贈与に係る財産の遺留分侵害額を決定する基となった相続開始時における価額(時価)

共同相続人および包括受遺者(遺留分義務者を含む)の全員の協議により、上記の方法に準じた方法または、他の合理的と認められる方法で遺留分侵害額に相当する価額を計算して申告する場ときは、その申告した額として差し支えありません。

相続税の取扱い

贈与が遺留分を侵害するものとして遺留分侵害額の支払請求が行われた場合、次の区分に応じて相続税の課税価格の合計額を計算します。

  • ・遺留分権利者
    相続または遺贈により取得した現物財産の価額+遺留分侵害額に相当する価額
  • ・遺留分義務者
    相続または遺贈により取得した現物財産の価額

「遺留分侵害額に相当する価額」は、次の計算式により求めます。

なお、特定贈与者から贈与を受けた財産に対して相続時精算課税制度を適用している場合、特定贈与者の死亡に係る相続税の計算の際に相続税精算課税適用者の課税価格に算入する財産の価額は、減額更正後の価額です。

<計算式>
遺留分侵害額×(A÷B)=遺留分侵害額に相当する価額
A:遺留分侵害額の支払請求の基因となった贈与に係る財産の相続開始時の価額(相続税評価額)
B:遺留分侵害額の支払請求の基因となった贈与に係る財産の遺留分侵害額を決定する基となった相続開始時における価額(時価)
経営に役立つ無料セミナー・無料資料請求
PREVNEXT