企業の代表者に脱税の意思がなくても、経理担当者が不正を行っていた場合、税務調査で不正経理を指摘される可能性があります。
不正経理が発覚すれば、税務署からペナルティを受けるだけでなく、社会的信用が低下する恐れがあるため、十分な注意が必要です。
本記事では、税務調査で指摘される不正経理の具体例とリスクおよび、適切な予防策について解説します。
【この記事の監修者】
讃良周泰税理士事務所 税理士 讃良 周泰
目次
税務調査で指摘される
不正経理の種類
不適切な経理処理を防ぐためにも、企業には税務調査で指摘される不正経理の手口とリスクを把握し、適正な管理を徹底することが求められます。
架空経費の計上
架空経費の計上は、課税所得を不当に減らす目的で行われる典型的な不正経理です。
たとえば、領収書や請求書を偽造し、実際には発生していない取引を装って経費計上するケースがあります。
税務調査では、不自然な経費の有無がチェックされ、必要に応じて経費の妥当性を証明する証憑の提示が求められます。
また、架空経費を計上していなくても、疑わしい状況がある場合は、調査時に追及される可能性があるため注意が必要です。
売上除外と隠蔽の手口
法人税は企業の利益に対して課される税金であるため、企業が収益を意図的に過少申告することは、脱税の手段として用いられることがあります。
売上除外の代表的な手口としては、現金取引の売上を帳簿に記載せず、売上台帳と実際の収益との間に乖離を生じさせる方法が挙げられます。
税務調査では、銀行口座や取引記録との照合を通じて売上の整合性がチェックされるため、数値の不一致があると指摘を受けることになります。
また、取引先への反面調査によって取引内容が確認されることもあるため、税務調査を受けた時点で売上除外を隠し続けることは困難です。
給与・報酬の不適切な処理
給与・報酬の支払いに関する不正経理も、税務調査で問題視される重要なポイントの一つです。
業務を行っていない従業員に給与を支払う「架空給与」や、実態のない役員への報酬を損金算入する手法は、脱税の手段として用いられることがあります。
税務署は給与支払いの妥当性を検証するため、従業員の勤務実態や取引記録を確認し、不審な点があれば調査時に厳しく指摘します。
不正経理が発覚した
場合のリスク
税務調査で不正経理が発覚すると、企業には税負担の増加以外の影響も生じます。
重加算税の適用
重加算税は、税務調査において仮装・隠蔽行為が指摘された場合に、過少申告加算税や無申告加算税の代わりに適用される附帯税です。
過少申告加算税の代わりに課される重加算税の税率は35%と非常に高いため、申告誤りによって重加算税が適用されると、税負担が大きくなります。
延滞税の計算方法の変更
延滞税は、納期限から実際に納付が完了するまでの期間に応じて課される附帯税です。
期限内申告書を提出後、1年以上経過して修正申告書を提出した場合、法定納期限から1年を経過する日の翌日から修正申告書を提出した日までの期間は、延滞税の計算対象から控除されます。
しかし、重加算税が課されるケースでは、この控除特例は適用されないため、申告期限から納付が完了するまでの全期間を基に延滞税が算出されます。
税務調査リスクの拡大
脱税行為が発覚した場合、次回の税務調査までの期間が短縮される可能性があります。
短期間で複数回の税務調査が実施されることは少ないものの、事業者は事業を営む限り、税務調査を完全に免れることはできません。
重加算税が賦課された事業者が提出する申告書の審査は、調査後より厳格になります。
申告内容に不明点がある場合、税務調査によって速やかに実態が解明されるようになるため、脱税行為は企業の経営に長期的な影響を及ぼします。
法的責任と刑事罰の可能性
不正経理の内容によっては、強制調査が実施される場合や、刑事責任を問われる可能性があります。
企業の代表者が逮捕・起訴された場合、企業活動への影響は避けられません。
また、信用の低下によって取引先との関係が悪化し、金融機関からの融資が困難になることも想定されます。