個人事業主において、車の経費は重要な費用の一つといえます。
ここでは、個人事業主において、プライベートにも利用するクルマに係る経費についてどのように考えるべきかを解説します。
【この記事の監修者】
讃良周泰税理士事務所 税理士 讃良 周泰
まず、車両を導入するかどうか?
乗用車の利用については、新型になっても性能があまり上がってなかったり、自動運転はまだ発達途上であったりと、その人気は一時期に比べ落ちてきているという話もあります。
しかし、業種にもよりますが個人事業主にとって車の導入について一度は検討すべき問題のひとつでしょう。
まずは車を購入した場合にかかる経費について見ていきます。
車の購入費用
車を購入した場合の経費には、基盤として車本体の取得費用があります。
この取得費用には、車を事業のために使うまでにかかった費用が含まれます。
例えば、自動車重量税、自動車税、リサイクル料金、自賠責保険料、登録代行費用、法定費用などが含まれます。
車の購入費用はそのまま経費にはならず、「減価償却」という方法で耐用年数において少しずつ経費にします。
耐用年数は一般の自動車で4年~6年となります。
参考:国税庁 確定申告書作成コーナー 耐用年数(車両・運搬具/工具)
例えば、諸費用込み150万円で軽自動車(総排気量0.65L)を新車購入した場合で、事業主は消費税の免税事業者とします。
購入したのは10月とします。
支払額は 150万円+消費税 =165万円 なのでこれがこの車の取得価額となります。
総排気量0.66L以下の軽自動車は耐用年数4年となります。
国税庁のHPで確認できます。
取得価額から減価償却費を計算して、経費として計上します。
減価償却費 = 取得価額 × 償却率 × その年の利用月数/12
償却の方法には、定額法と定率法の2つがあります。
個人事業主の場合、法定償却方法は定額法です。
個人事業主が償却方法として定率法を選択したい場合には、事前に税務署へ届出が必要となります。
減価償却費 = 165万円×0.25(定額法償却率)×3(10月~12月までの月数)/12
= 103,125円(取得年度の減価償却費)
車の取得から2年目~4年目までは 412,500円ずつ、そして最後の5年目には残りの309,374円がそれぞれ減価償却費として経費計上されます。(1円は備忘価格として残します)
耐用年数が4年といっても、足かけ5年となる点は要注意です。
参考:国税庁 減価償却資産の償却率表
中古車の購入の考え方
車を購入する際、中古車を選択するという方法もあります。
耐用年数を過ぎた車であれば、最短2年で経費にすることができます。
先ほどの例を中古車で考えてみます。
同様の軽自動車で4年落ちの中古車だった場合を考えてみます。取得費用は消費税込で55万円であったとします。
中古車を取得した場合の耐用年数は
① 耐用年数の全部を過ぎているとき 法定耐用年数 ×0.2
② 耐用年数の一部過ぎているとき (法定耐用年数 - 経過年数)+ (経過年数×0.2)となります。
どちらも端数は切捨てますが、最低2年となります。
中古車の耐用年数 4年×0.2 =0.8年(2年未満)→ 2年
中古車の減価償却費 = 55万円×0.5(2年の定額法償却率)× 3/12 = 68,750
2年目は275,000円、最終年は206,249円が減価償却費として計上されます。
なお、青色申告であれば、30万円未満の固定資産は一律にその年の経費として全額落とすことが可能です。
ただし、消費税の免税事業者の場合は消費税を含めて30万円未満かどうかを判断することになります。
参考:中古資産の耐用年数 国税庁
参考:中小事業者の少額減価償却資産の取得価額の必要経費算入の特例 国税庁
減価償却:個人と法人違い
ここで、個人と法人の減価償却について違いがあることを確認しておきましょう。
車に限ったことではなく、固定資産の減価償却すべてについて共通することでもあります。
個人の減価償却は、その償却費が強制的に必要経費とされます。
計算で求めた償却費より過大な償却も過少な償却も認められません。
償却費を計上し忘れた場合には、所得税の還付対象となります。
これに対し、法人の減価償却は償却限度額の範囲内で費用とした金額が損金に算入されます。
過少な償却が認められるわけです。
個人と違って、減価償却の計算で求めた金額は「限度額」なのです。
所得税においては、必要経費について厳密に判定することが非常に重要となってくるからです。
よって、固定資産の減価償却について、個人は「強制償却」、法人は「任意償却」と呼ばれます。
車の維持管理費
車を維持するためにかかる費用としては、次のようなものがあり、会計上の勘定科目も多岐にわたります。
- 保険料 自賠責保険、任意保険、車両保険
- 車両費 燃料代、点検費用(法定費用+整備費)、車検費用
- 旅費交通費 高速代、ETC料金、一時的な駐車料金
- 賃借料 駐車場代
- 消耗品費 タイヤ、オイルその他メンテナンス費用
- 租税公課 自動車税・軽自動車税、自動車重量税、自動車取得税
- 支払利息 ローン金利(ローン購入の場合)
この中の費用には、車種、走行距離、年式、消耗具合などで大きく変わる要素もあり、経年劣化により費用増加となるものもあります。
初期投資額と年間維持費は導入初期においては反比例するといえるでしょう。
家事費と家事関連費
車の利用が100%事業用である場合、また100%プライベートである場合には車の利用による経費の計上は明らかです。
100%費用として計上できるのは前者のみです。
ところが、
「家事関連費」といわれる事業でも私用でも共通に発生する費用があります。
所得税法上では、必要経費は費用として認めるが、家事費は必要経費と認めないとした上で、家事関連費のうち、「業務に必要かつ明らかに区分できるものは」必要経費として認めています。
つまり、どの費用であれ、業務に必要であることが明らかだけでなく、「区分できる」ことがポイントとなります。
区分とは、車の場合は詳細に走行記録を取ったり、日数をカウントしたり、その事業分の合理的な割合が説明できるように区分されるかどうかということなのです。
まとめ
最近はカーシェアリングも利用しやすくなっており、頻繁に車を利用しない場合は必要な時だけカーシェアリングなどのサービスを利用するのが得策かと思います。
さまざまな利用を想定しつつ、極力コストパフォーマンスの高い車の利用法を考えていきましょう。