譲渡所得の取得費に該当する費用は、譲渡資産の購入金額のほか、購入時の諸経費も対象です。
たとえば購入時の手数料(仲介手数料など)や、譲渡資産を相続・贈与により取得した際に支払った費用も取得費に含まれます。
ただ相続などの取得時にかかった費用のすべてが取得費に該当するわけではありませんので、本記事では取得費に該当する費用・該当しない費用について解説します。
【この記事の監修者】
讃良周泰税理士事務所 税理士 讃良 周泰
目次
相続・贈与取得時の支出で取得費に計上できる費用
譲渡資産の取得費に該当する費用は、取得のために通常必要と認められる支出です。
取得費に加算できる相続・贈与時の費用も同様で、取得に際して通常必要な支出に限られます。
相続・贈与の登記費用は取得費に計上できる
相続・贈与により不動産を取得する場合、登録免許税(登記費用を含む)や不動産取得税を支払います。
(相続取得の場合、不動産取得税は課されません。)
それらの税金は、取得する際に必要な支出ですので、譲渡所得の取得費に加算できます。
また相続や贈与により何度も所有者を変更している場合、前所有者らが支払った登録免許税等も取得費の対象です。
ゴルフ会員権などの名義書換手数料も取得費に加算できる
一昔前まで、贈与の際に受贈者が支払ったゴルフ会員権の名義書換手数料は、譲渡所得の取得費に加算できませんでした。
しかし平成17年2月1日の最高裁判決で、ゴルフ会員権の名義書換手数料の取得費加算が認められ、資産を取得するための付随費用も、取得費の対象となるとの判断が下されました。
最高裁判決を受け、所得税法基本通達も改正され、現在ではゴルフ会員権だけでなく、株式の名義書換の際に支払う手数料なども譲渡所得の取得費の対象です。
取得費加算の対象とならない相続・贈与時の経費
譲渡資産を相続・贈与により取得した際の諸費用でも、遺産分割に関する支出は取得費に加算できないため、ご注意ください。
遺産分割協議の際の弁護士費用や訴訟費用
遺産分割の争いにおいての訴訟費用や弁護士報酬は、通常の相続取得では支払う必要のない費用です。
譲渡所得の取得費に加算できる費用は、通常取得に際して支出する費用に限られるため、相続人間の紛争解決の際に支払う訴訟費用などは取得費の対象外です。
事業用経費として計上した費用は取得費には含まれない
事業用資産を相続・贈与により取得した場合、登録免許税などの諸経費は、事業所得の必要経費として計上可能です。
しかし相続・贈与取得時の登録免許税などを、事業所得と譲渡所得の双方で経費算入すると費用の二重計上になるため、事業所得の必要経費に計上した場合は、譲渡所得の取得費に加算できません。
財産取得時に納税した相続税・贈与税は取得費に計上できない
贈与により譲渡資産を取得し、納めた贈与税は譲渡所得の取得費に加算できません。
相続取得の際に納めた相続税も、原則譲渡所得の取得費に加算できませんが、譲渡資産を相続税の申告期限から3年以内に売却した場合、譲渡資産の相続取得に伴って支払った相続税は取得費に加算できます。
(租税特別措置法第39条)
また取得費に加算できる相続税は、納めた相続税のうち、譲渡資産の相続税評価額に対応する部分です。
なお平成26年12月31日以前に相続取得した土地を譲渡した場合、譲渡した土地以外の土地に対応した相続税についても、譲渡所得の取得費に加算できました。
しかし平成27年1月1日以降に相続取得した土地は、譲渡した土地に対して支払った相続税のみが対象となっていますので、ご注意ください。
概算取得費を使用する場合は諸経費を取得費に加算できない
譲渡所得の取得費の金額が不明な場合、売却金額の5%を概算取得費として用いることも可能ですが、概算取得費に相続・贈与取得の諸費用を加算することはできません。
(相続税の取得費加算の特例は、概算取得費を使用する場合でも適用可能です。)
概算取得費よりも、相続・贈与取得の諸費用の金額が高ければ、概算取得費を使用しない方が有利です。
しかし