遺留分に関する民法の特例に係る合意書
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この書式は、遺留分に関する民法の特例に係る合意書のひな形です。
書式の一部抜粋(本文)
合意書
○○社の旧代表者○○○○(以下「甲」という)の遺留分を有する推定相続人(子)である○○○○(以下「乙」という)、(妻)○○○○(以下「丙」という)、及び(子)○○○○(以下「丁」という)は、中小企業における経営のしょうけいの円滑化に関する法律(以下、「法」という)に基づき、以下のとおり合意する。
第1条(目的) 本合意は、乙が甲からの贈与により取得した○○社の株式につき遺留分を有の算定に係る合意等をすることにより、○○社の経営の承継の円滑化を図ることを目的とする。
第2条(確認) 乙、丙及び丁は、次の各事項を相互に確認する。
一 甲が○○社の代表取締役であったこと
二 乙、丙及び丁がいずれも甲の推定相続人であり、かつ、これらの者以外に甲の推定相続人が存在しないこと
三 乙が、現在、○○社の総株主(ただし、株主総会において決議することができる事項の全部につき議決権を行使することができない株主を除く。)の議決権○○個の過半数である○○個を保有してること。
四 乙が、現在、○○社の代表取締役であること。
第3条(除外合意、固定同意) 乙、丙及び丁は、乙が甲から令和○年○月○日付贈与により取得した○○社の株式○○株について、次のとおり合意する。
一 上記○○株のうち××株について、甲を被相続人とする相続に際し、その価額を遺留分を算定するための財産の価額に算入しない。
二 上記○○株のうち□□株について、甲を被相続人とする相続に際し、遺留分を算定するための財産の価額に算入すべき価額○○円(1株あたり○○円。弁護士○○が相当な価額として証明をしたもの。)とする。
第4条(衡平を図るための措置) 乙、丙及び丁は、甲の推定相続人間の衡平を図るための措置として、次の贈与の全部について、甲を被相続人とする相続に際し、その価額を遺留分を算定するための財産の価額に算入しないことを合意する。
一 丙が甲から令和○年○月○日付贈与により取得した別紙物件目録記載の土地
二 丁が甲から令和○年○月○日付贈与により取得した現金○○万円
第5条(後継者以外の推定相続人がとることができる措置) 乙が第3条の合意の対象とした株式を処分したときは、丙及び丁は、乙に対し、それぞれ、乙が処分した株式数に○○万円を乗じて得た金額を請求できるものとする。
2 乙が甲の生存中に○○社の代表取締役を退任したときは、丙及び丁は、乙に対し、それぞれ○○万円を請求できるものとする。
3 前2項のいずれかに該当したときは、丙及び丁は、共同して、本合意を解除することができる。
4 前項の規定による解除は、第1項又は第2項の金員の請求を妨げない。
第6条(経済産業大臣の確認) 乙は、本合意の成立度1ヵ月以内に、法第7条所定の経済産業大臣の確認の申請をするものとする。
2 丙及び丁は、前項の確認申請手続に必要な書類の収集、提出等、乙の同確認申請手続に協力するものとする。
第7条(家庭裁判所の許可) 乙は、前条の経済産業大臣の確認を受けたときは、当該確認を受けた日から1ヵ月以内に、第3条及び第4条の合意に基づき、管轄家庭裁判所に対し、法第8条所定の許可審判の申立てをするものとする。
2 丙及び丁は、前項の許可審判申立手続に必要な書類の収集、提出等、乙の同許可審判手続に協力するものとする。
第8条(管轄合意) 甲、乙、丙及び丁は、本契約に関して紛争が生じた場合には、○○地方裁判所を第一審の専属的裁判所とすることを合意する。
以上の合意成立の証として、本合意書4通を作成し、甲乙丙丁各1通を保有するものとする。
書式内で注意すべきポイント
注1 本合意書は、「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律」(以下「経営承継法」という)の定める特例中小企業者である会社の旧代表者とその推定相続人との間で、旧代表者がその後継者に贈与した同社の株式に関し経営承継法に基づき遺留分算定に係る合意をするものである。
注2 特例中小企業者の代表者が死亡又は退任した場合に後継者がその事業を承継するためには、当該企業の持分又は株式を後継者に集中して取得させる必要がある。このために代表者が生前贈与や遺言により後継者に自己の有する持分又は株式を集中して取得させることにしても、他の相続人から遺留分減殺請求を行使されると後継者への事業の承継が妨げられることがありうる。そこで、経営承継法は、民法の遺留分の規定について特例を設け、後継者への株式の集中を図っている。
注3 遺留分算定に係る合意は、推定相続人全員の書面による合意が必要であり、その対象となる株式等は、旧代表者から後継者に贈与されたもので、合意時における後継者が所有する株式等のうち、合意の対象とした株式等を除いた議決権の数が50パーセント以下であり、合意の対象となる株式等を加えた議決権が過半数となる場合にのみ合意が可能であるので、第2条はその要件を満たしていることを確認したものである。
注4 第3条は、除外合意及び固定合意について定めたものである。
除外合意とは、後継者が代表者から贈与された持分・株式について、その価額を遺留分を算定する財産の価額から除外する合意である。これにより、当該持分・)株式贈与について遺留分減殺請求を受けることがなくなる。
固定合意とは、後継者が代表者から贈与された持分・株式について、遺留分算定の基礎に算入する価額を当該合意をしたときの価額に固定する合意である。これにより、後継者が企業経営についてした努力により当該企業が成長し、その企業価額が贈与時よりも高額となった場合は後継者は増加分を取得することができる。固定合意の価額は、弁護士、公認会計士、税理士等その時における相当な価額であることと証明した客観的価額であることが必要である。
注5 第4条は、後継者以外の推定相続人に対する旧代表者の贈与財産について除外合意したものである。
注6 旧代表者から後継者への贈与株式につき除外合意、固定合意をする際には、その合意書面で、①後継者が除外合意ないし固定合意の対象とした株式を処分してしまったとき、②旧代表者の生存中に後継者が代表者として経営に従事しなくなってしまったときに、他の推定相続人において当該合意を解除することができる等、他の推定相続人のとることができる措置について定めておかなければならない。
第5条は、上記①②の場合に、他の推定相続人のとることができる措置を合意したものである。
注7 ・・・・・
注8 ・・・・・