譲渡所得の3,000万円特別控除は、居住用財産を売却した際に適用できる制度です。
他の特例の適用を受けていた場合や、建物を取り壊してから売却した場合など、特例を受けられないケースや適用できる控除額が変わることもあります。
3,000万円特別控除を受けられないと、数百万円単位の納税金額が追加で発生するため、適用する際に気をつけるべきポイントをご説明します。
【この記事の監修者】
讃良周泰税理士事務所 税理士 讃良 周泰
目次
3,000万円特別控除は建物所有者に対する特例
譲渡所得の3,000万円特別控除は、居住用の建物に対しての特例で、建物と土地の所有者が同じだった場合、土地の売却益に対しても控除額を適用できます。
建物と土地の所有者が異なるケースでは、以下の3つ要件を満たした場合に限り土地所有者も特例を適用できます。
<土地所有者が適用する際の要件>
● 建物と一緒に土地を売却
● 建物所有者と生計を一にする親族
● 売却物件に建物所有者と土地所有者が居住していた
土地所有者が適用できる特別控除の限度額
建物所有者と土地所有者が異なる場合、土地所有者が適用できる3,000万円特別控除の金額は、建物所有者が売却益から差し引いた特別控除の残額です。
建物所有者の譲渡益が2,500万円だった場合、土地所有者の適用できる控除額は、残額の500万円です。
土地所有者が複数人いる場合、各人が適用する控除額は任意で分けられます。
なお土地所有者が建物の持分を保有していれば、単独で3,000万円特別控除を適用できます。
3,000万円特別控除は1か所の物件だけにしか適用できない
複数の物件を居住用として使用していた場合でも、3,000万円特別控除が適用できる物件は1か所に限られます。
特例適用する物件の選定は任意ではなく、日常生活の状況や入居目的、建物の設備などを総合的に加味し、生活の拠点として使用していた物件が特例対象となります。
したがって別荘や、3,000万円特別控除を受ける目的で入居した物件に対し、特例は適用できません。
建物取り壊した場合は1年以内に売却すること
3,000万円特別控除は、居住しなくなった日以後3年を経過する日の属する12月31日までに譲渡することが要件です。
しかし事前に建物を取り壊し、土地のみを売却する場合は、家屋を取り壊した日から1年以内に譲渡しなければなりません。
自宅から退去後3年以内に売却しても、建物取り壊しから1年超経過していれば3,000万円特別控除は適用できないため、処分する目的で自宅を離れる場合は、売却先を決めてから取り壊す必要があります。
建物取り壊し後に貸付用としてはいけない
土地のみを売却する場合、建物を取り壊してから売却するまでの期間は、貸付用などの用途に使用してはいけません。
土地を貸付駐車場などとして供した場合、その時点で3,000万円特別控除は受けられなくなります。
災害による建物滅失の場合の猶予期間は3年以内
建物取り壊しの原因が災害による滅失の場合は、特例適用の猶予期間は取り壊しから1年以内ではなく、居住しなくなった日以後3年を経過する日の属する12月31日までに譲渡すれば3,000万円特別控除が適用できます。
しかし滅失した建物を取り除いた後、貸付用などの用途に供した場合、特例は適用できなくなるためご注意ください。
店舗兼住宅に3,000万円控除を適用する際の例外規定
店舗兼住宅の場合、事業用部分の面積に対しては3,000万円特別控除を適用できません。
全体の7割を自宅用、3割を事業用として使用しているケースでは、7割部分だけが特例の対象です。
(共同スペースは自宅用と事業用の比率で按分し、自宅用に対応する面積のみ適用可能です。)
しかし居住用として使用している割合が全体のおおむね90%以上になる場合は、物件全体に対して特例を適用できます。
なお居住用の利用状況については、譲渡時点で判断しますが、自宅から退去後に売却する際は、住まなくなった直前の利用状況で判定します。
住宅ローン控除との併用適用は不可
3,000万円特別控除は、住宅ローン控除(住宅等借入金特別控除 )との併用はできません。
住宅ローン控除を前年・前々年に適用している場合についても、3,000万円特別控除は適用対象外となります。
ただ住宅ローン控除を適用していた場合でも、譲渡所得の確定申告期限までに前年・前々年の住宅ローン控除の適用を取りやめる修正申告書を提出することにより、3,000万円特別控除を適用する方法もあります。
なお