契約書のひな形、内容証明郵便書式、労務書式、
会社法議事録・通知書のテンプレートが無料

社員がうつ病に罹患していなくても会社に慰謝料の賠償が命じられた裁判例




最近、長時間労働により精神疾患となった場合はもちろんのこと、そうでない場合でも企業の安全配慮義務違反が認められた裁判例があったと聞きました。

どのようなもので、なぜそのような判断がされたのでしょうか?


【この記事の著者】 定政社会保険労務士事務所 特定社会保険労務士 定政 晃弘

2020年6月10日に東京地裁であった判決のことですね。

この事件は、アクサ生命保険の営業社員が、長時間労働をさせられたとして会社に対し慰謝料100万円を求めたもので、裁判所は会社に10万円の支払いを命じました。

これだけだとよくあるような事件なのですが、詳細を見ていくと非常に珍しいケースであって、企業にとっては厳しい判決だったと言えるものです。

長時間労働に関する裁判の場合、1か月100時間を超えるような残業が数カ月にもわたって続き、精神疾患を発症して自殺し、遺族が会社に対して損害賠償請求をするというものが最悪のケースでありながら現実にはしばしば起こっています。

ところが、この社員がどの程度の長時間労働を強いられていたかというと、「1か月平均の残業時間は30~50時間」であって「精神疾患は発症していない」のです。

つまり、国の定める過労死ライン(精神疾患発症前1か月の残業時間が100時間、または、発症前2~6か月間の残業時間の平均が1か月当たり80時間を超える場合)を下回っており、そのような意味で極めて珍しい判決だと言えるのです。

では、なぜこのような判断を裁判所はしたのでしょうか。

裁判所は、1か月当たりの残業時間は30時間~50時間(ここでいう「残業時間」とは法定の時間外労働をいう)であり、具体的な疾患を発症していないものの、「1年以上にわたって」、「心身の不調を来す可能性があるような時間外労働」に従事させたことを問題視しました。

36協定を締結した場合、会社は社員に対して1か月に残業を45時間、1年間で360時間行わせることが可能です。

36協定の有効期間は通常1年間であり、言い換えれば1年間において1か月平均で30時間の残業をさせても問題ないということになります。

したがって、

PREVNEXT

関連記事

みなし配当に該当するケースおよび特例制度を解説【基礎知識編】

自己株式の取得や、会社の合併・分割が行われる場合、みなし配当が発生する可能性があります。 みなし配当の課税対象になれば、一般の配当と同様の課税関係が生...

家族4人死亡事故で危険運転致死傷罪は成立する!?

動画解説はこちら 2014年5月20日に施行された「自動車運転死傷行為処罰法」は、危険で悪質な運転による事故に対し、従前よりも厳し...

ネットでコンサートのチケットを転売すると犯罪!?

今回は、コンサートチケットの転売が犯罪になるのかどうかについて解説します。 事件はこうして起きた 「嵐のチケットを無許可で転売、25...