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非正規社員に対する退職金の不支給は是か非か?(最高裁判決)




今年(2020年)10月の最高裁判決によれば、非正規社員に対して退職金を支給しないことが「不合理とはいえない」とのことでした。

この判決を踏まえ、非正規社員には退職金を支給しないという運用を続けても問題ないということでしょうか?


【この記事の著者】 定政社会保険労務士事務所 特定社会保険労務士 定政 晃弘

「最高裁判決」とは、2020年10月13日に判決のあった「メトロコマース事件」のことですね。

この事件は、東京メトロの子会社であるメトロコマースが運営する売店に約10年間勤務していた元契約社員の女性が退職金の支払いを求めたもので、一審では退職金の不支給は不合理ではないとした一方、二審では不合理とされたため、最高裁の判断が注目されていました。

この判決では、以下のような事情により、正社員と契約社員との間において業務内容や責任の程度には「一定の相違があったことが否定できない」としたり、「一定の相違があった」としました。
(※内容は筆者が要約したものです)

・売店の販売員が休暇や欠勤により不在となった場合、正社員はその穴埋めをしなければならないが、その役割は正社員が担っており、契約社員がそのような穴埋めをすることはなかった。

・正社員は、他の売店も含めた複数の売店を統括するエリアマネージャー業務を行なうことがあったが、契約社員がエリアマネージャー業務を行なうことはなかった。

・正社員には売店業務ではない他の業務へ配置転換となる可能性があった。契約社員は他の売店先に異動になることはあっても、売店業務以外の業務を行なうことはなかった。

従って、原告の元契約社員が約10年程度継続して勤務していたとしても、退職金を不支給とすることは「不合理とはいえない」と判断されました。

ただし、裁判官の一人は、「契約社員は売店業務に従事する正社員と職務内容や変更の範囲に大きな相違はない」等と反対意見を述べており、いかなる場合であっても非正規社員に対して退職金を不支給とすることには慎重になるべきでしょう。

つまり、前述したような正社員と非正規社員との間において、業務内容の違いをできる限り明確にすることや、正社員には他の業務や他の支店・営業所へ異動となる可能性がある旨を就業規則に明記すること(さらにいえば、住居の変更を伴う異動の可能性もあって、実際の異動実績があれば尚可)は必ず行なっておかなければなりません。

また、

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