農地の相続税納税猶予制度の確定事由に該当した場合、猶予されていた相続税を納めることになり、相続税の支払いが免除されるのは、特定の要件を満たした場合に限られます。
本記事では、農地の相続税納税猶予制度の確定要件および、免除要件について解説します。
【この記事の監修者】
讃良周泰税理士事務所 税理士 讃良 周泰
目次
農地の相続税納税猶予制度の確定要件
納税猶予の確定とは、納付の先延ばしが認められていた税金の支払いが決定することをいいます。
相続税の申告で農地の相続税納税猶予を適用したとしても、確定事由が発生した場合には納税猶予が打ち切りとなり、その時点で猶予されている相続税を納めなければなりません。
<農地の相続税の納税猶予が確定する主な事由>
・猶予適用農地等の譲渡、貸付、転用、耕作放棄
・納税猶予適用継続届出書の未提出
農地の納税猶予は、農業相続人が引き続き農地として利用することを前提に適用する特例制度です。
そのため農地転用や耕作放棄など、農地として利用していないケースはもちろんのこと、売却や貸付も確定事由に該当します。
「納税猶予適用継続届出書」は、相続税の納税猶予の特例を継続して受けるために提出する届出書です。
特例を適用してから3年ごとに税務署へ提出しなければならず、提出を怠ると猶予額が全てが確定しますのでご注意ください。
農地の相続税納税猶予制度の「一部確定」と「全部確定」の違い
農地の相続税納税猶予の確定には、猶予額の一部を納付することになる「一部確定」と、猶予額の全額を納付することになる「全部確定」の2種類があります。
一部確定は、確定事由に該当した部分の納税猶予が確定することをいい、全部確定は農業相続人の納税猶予がすべて確定することをいいます。
<一部確定に該当する主なケース>
・猶予適用農地等の譲渡、貸付、転用、耕作放棄
(該当面積20%以下)
・収用交換等による譲渡等
・生産緑地地区内の農地の買取申出
<全部確定に該当する主なケース>
・猶予適用農地等の譲渡、貸付、転用、耕作放棄
(該当面積20%超)
・納税猶予適用継続届出書の未提出
・農業相続人が猶予適用農地等での農業経営をやめた場合
農地を売却等した場合、売却した面積が猶予適用農地等の20%を超えてしまうと、猶予額の大小にかかわらず全部確定となります。
ただし、農地を手放した理由が収用や生産緑地地区内の農地の買取申出の場合には、確定する面積が20%を超えたとしても全部確定にはなりません。
納税猶予期限の確定事由の例外規定
農地の相続税納税猶予制度には、猶予適用農地等の売却・貸付等を行った場合でも、納税猶予が確定しない例外的な措置が設けられています。
<納税猶予期限の確定事由の例外>
・確定した面積が20%以内
(全部確定の要件に該当する場合を除く)
・猶予適用農地等の譲渡に該当しない場合
・猶予適用農地等の貸付に該当しない場合
確定した面積が20%以下であれば、残りの農地に対する納税猶予は継続します。
農地を手放した場合でも、買換特例や付替特例により、新たに農地等として利用する土地を取得したときは、猶予適用農地等の譲渡に該当しないものとして扱われます。
農地の貸付は原則として確定事由に該当しますが、市街化区域外で農業経営基盤強化促進法等に基づく事業による貸付など、一定の条件下での貸付等は、例外的に確定事由には当たりません。
なお、これらの措置を受けるためには、税務署への届出等が必要です。
手続きや書類不備があると納税猶予が確定してしまう恐れがあるため、事前に管轄税務署へ連絡し、慎重に手続きを進めてください。
農地の相続税納税猶予制度の免除されるケース
農地の相続税納税猶予制度を適用した農業相続人には、基本的に終身営農が求められます。
しかし、次に紹介するケースに該当した場合には、納税猶予が免除され、相続税の支払いが不要となります。
特例の適用を受けた農業相続人の死亡
納税猶予が免除されるケースで最も多いのが、農業相続人の死亡による免除です。
税務署に「相続税の免除届出書」を提出することで、猶予されていた相続税の支払いが免除されますので、農業相続人の相続が発生しましたら、相続人は速やかに手続きを行ってください。
なお、農業相続人の相続人についても、要件を満たせば農地の相続税納税猶予制度を適用することは可能です。