デジタルトランスフォーメーション(DX)は、効率性の向上やコストの削減、競争力の強化を目的に導入されることが多いですが、税務コンプライアンスの強化にも貢献します。
本記事では、DXがもたらす税務コンプライアンス強化の内容と、導入する際の注意点について解説します。
【この記事の監修者】
讃良周泰税理士事務所 税理士 讃良 周泰
目次
税務コンプライアンスの重要性と企業が抱える課題
税務コンプライアンスは、企業が税法や規制を遵守するために行う一連の活動をいいます。
税務コンプライアンスを確保するには、期限内の申告・納税手続きを行うだけでなく、収入や経費を詳細に記録し、税務当局に提出するための必要書類を整えることが重要です。
適切な税務コンプライアンスは企業の信頼性を高めるだけでなく、罰則やペナルティを回避するために不可欠ですが、市場のグローバル化に伴い、税務環境は複雑化しており、、現地や国際的な税法や規則を理解することが課題となっています。
法令解釈の誤りは税務調査に直結しますので、税務コンプライアンスの強化は企業が優先的に取り組むべき事項の一つです。
DXの導入で税務コンプライアンスが強化される理由
DXを導入した場合、税務コンプライアンスに関する部分では、次のような効果が期待できます。
自動化によるエラーの削減
手動による税務処理で生じるヒューマンエラーをゼロにすることは難しく、ケアレスミスが原因で申告誤りが指摘され、追徴課税を受けることも珍しくありません。
ヒューマンエラーは対処するための労力も問題となりますが、DXを導入すればヒューマンエラーを抑制しつつ、税務処理にかかるコストを削減できます。
たとえば、経費精算システムや帳簿管理システムの導入で税務処理を自動化することで、人的リソースを削減できますし、入力作業等で生じるミスも無くせます。
コンプライアンスチェックの効率化
AIを活用した自動監査システムは、膨大なデータを迅速に解析し、異常値や不正の兆候を検出することができます。
たとえば、クラウド型会計ソフトウェアは、自動入力による作業効率の向上だけでなく、エラーをチェックする機能も備わっています。
データの重複入力などを察知・警告することで、税務処理誤りを未然に防ぐことができますし、エラーをチェックするための労力も削減できます。
リアルタイムデータの活用
DXを導入することで、リアルタイムでのデータ収集と分析が可能になります。
AIやクラウドベースのシステムは、法改正や規則変更をリアルタイムで反映する機能が実装されています。
税務上の問題点を把握するのが遅くなれば対応も後手に回ってしまいますが、定期的なシステムのアップデートで、法改正に対応していないことで生じるコンプライアンス違反を回避できます。
DXを導入する際の注意点
DXは導入するだけでは恩恵を十分に享受できませんし、導入する際に生じるリスクも事前に把握しておく必要があります。
導入コストと費用対効果の検証
DXを導入する際は初期投資費用がかかるため、一時的に負担が重くなります。
長期的なスパンではコスト削減の効果が期待できますが、投資対効果を明確にしないとDX導入によるコストカットのメリットが薄れます。
初期投資費用が重くなる場合には、全体でシステムを導入するのではなく、部署単位など段階的に導入して負担を軽減するのも選択肢です。
データセキュリティの確保
デジタル化は、セキュリティ対策も並行して実施しなければなりません。
企業がDXを導入すれば、テレワークで作業を行えるようになりますが、セキュリティ管理が不十分だと、外部に情報が漏洩するリスクが生じます。
情報漏洩は企業の信用が失墜する問題ですので、強固なセキュリティ対策を講じ、定期的なセキュリティチェックを行うなどの対応が求められます。