契約書のひな形、内容証明郵便書式、労務書式、
会社法議事録・通知書のテンプレートが無料

上場後に生じた疑義ある売上取引

husei19

上場直後の会社で、決算発表遅延という話を聞きました。何らかの問題があったのでしょうが、不正に関わる問題などがあったのでしょうか?


【この記事の著者】 江黒公認会計士事務所 公認会計士 江黒 崇史
http://www.eguro-cpa.com/

期末の売上に対して疑義が生じ、調査が入ったことが原因でした。

今年(平成28年)の3月に上場した企業で、3月決算企業であるにも関わらず、突如、決算発表延期のリリースを出しました。
3月上場で最初の決算発表が延期というのはかなり異例です。

その理由は、以下のようなものでした。
リリースから抜粋します。

「この度、監査法人から、期末監査の過程におきまして、当社の売上計上についての会計処理の前提となる事実の調査が必要であるとのご指摘をいただきました。また、監査法人から第三者委員会を設置して事実の調査にあたることが望ましいとの要請をいただきました。したがいまして、決算確定までに時間を要する見込みとなりましたことから決算短信発表を延期することといたしました。」

この会社は主たる事業として、ソーラーパネルを個人投資家へ販売していますが、結果として、期末日においてソーラーパネル・コンパクト発電所の売上について不適切な会計処理があり、訂正を求められることとなりました。

まず、コンパクト発電所の売上は、顧客の購入意思たる「工事注文書」及び、顧客に対する発電所の引き渡しの証明書たる「受領書」の2つの書類により売上計上となります。

購入意思の注文書だけでは、まだソーラーパネルを引き渡していないので売上とするには早いわけです。

ところが、この会社では顧客から工事注文書の提出を受ける前に、顧客の意思を確認したものとして売上計上する運用が行われてしまいました

【売上計上要件】

本来工事注文書及び受領書
(一部の取引の)実態注文書を受ける前に、売上計上

顧客から工事注文書や購入申込書がない時点で売上計上をしてしまうというのは、なかなか信じがたいのですが、この会社にはそのような事態を誘発する事情があったのです。

それは、「株式上場」です。

この会社は、平成28年3月期を申請期として株式上場を目指していました。
上場申請期の業績は、上場準備会社にとって非常に重要となります。
予算と実績のかい離があれば、それを原因に上場を延期されることがあるからです。

ところがこの会社は、平成28年3月期の上期(平成27年9月期)で下記の予算達成状況でした。

(抜粋資料)
平成27年9月期(上期決算)【単位:千円】

  予算実績差異
売上高4,072,8353,230,785△842,050
営業損益609,684503,019△106,665

この予算達成状況では、下期において相当な挽回をしなければ、平成28年3月期の通期予算達成ができないことがわかります。

その結果、

経営に役立つ無料セミナー・無料資料請求
PREVNEXT