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売上の平準化のための前倒し計上の手口とは?




コンプライアンスや会計処理に対する経営陣の意識の低さから行なわれた不正会計の事例を教えてください。


【この記事の著者】 江黒公認会計士事務所 公認会計士 江黒 崇史
http://www.eguro-cpa.com/

不正会計では、さまざま目的により不正計上が行なわれます。
今回紹介するのは、工業用計測器の製造販売会社で「売上の平準化を実現するため」に売上の前倒し計上を実施した事例です。

「売上の平準化」とは、毎月の売上高を同じ水準にすることを意味します。
当該不正実施会社では、毎月一定の売上を計上することを重要な経営目標にしていました。

ただ、これには疑問がわきます。

売上は、あくまで「お客様へ提供したサービスの対価」です。
また、同社は製造業であり機械を納品することから、注文を受けた機械の種類や工場の製造工程の状況により完成品の納品時期は左右されます。

そのような状況下でも、「売上の平準化」を目指すとすれば、売上の凸凹をなくすために不正な売上を計上するしかありません。

なぜ、当該不正実施会社は売上の平準化を目指したのでしょうか?
そして、どのような手口で不正な売上を計上していたのでしょうか?

当該不正実施会社では、営業部や製造部の部長又は次長、課長クラスが出席する「生産会議」という会議で前倒し計上が決定されていました。

同社では毎月、月末前に生産会議を実施していました。
この会議では、当月末の受注、生産及び売上高等が議論されるとともに、翌月末に計上すべき売上の前倒し額が決定されていたのです。

前倒し額については、事業計画との差異が大きくならないように、営業部の責任者から製造部の担当者に対して指示がなされていたとのことです。

さらに生産会議では、前月までに前倒し計上されたもので、実際に出荷され実現された売上高について、当月の売上高から精算すべき売上金額として報告もなされていたという念入りな前倒し計上の管理状況でした。

当該前倒し売上については、製造担当者が入力し、システム上も前倒し売上が計上されました。
対応する仕入れについては、空仕入処理や先行処理をして、仕入れについても前倒し計上をしていました。

本来であれば、コンプライアンスを守り、内部統制の機能を果たす立場の役職者が、本件不適切会計処理を認識していたということですから、同社のコンプライアンス意識が低いことが窺えます。

なお、

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