会社の費用の繰延計上による不正の手口とは?





会社の費用を繰延計上するという手口を使った不正会計の事例があれば教えてください。

【この記事の著者】 江黒公認会計士事務所 公認会計士 江黒 崇史
http://www.eguro-cpa.com/


不正会計では売上に絡んだものが多いのですが、じつは「利益の水増し追求」のための不正も多いものです。

今回は、業績目標達成のためのプレッシャーから利益水増しのために費用を繰り延べした不正事例を紹介します。

不正に用いた勘定科目は広告宣伝費。
登場会社は、シンプルに2社です。


【不正実施会社】
↑ ↓
  広告サービスの提供↑ ↓広告の企画・制作を委託
↑ ↓
【甲社】

不正実施会社は、甲社に広告に関する企画から制作までを一任しており、甲社の売上のほとんどは不正実施会社に依存していました。

このように、売上を一部の会社に依存していると、発注側からの無理難題については拒否できなくなることがあるので、気をつけたいところです。

さて、実際に行われた不正取引の内容ですが、非常に単純です。
すべてが下記のように、正しく認識すべき時期を繰り延べたものです。

—————————————————–
【1】
・本来広告宣伝費を認識すべき期間
 →平成27年12月に2,300万円の広告宣伝費を認識すべきであった

・不正に実施した処理
 →平成28年度1月の広告宣伝費として処理

・広告の種類
 →SEM(サーチエンジンマーケティング)
 →アフェリエイト


【2】
・本来広告宣伝費を認識すべき期間
 →総額2,500万円の広告宣伝費の内、平成28年3月においては666万円の広告宣伝費を認識すべきであった

・不正に実施した処理
 →当該666万円を平成28年4月以降の広告宣伝費として平成28年度6月までに処理

・広告の種類
 →ラジオ


【3】
・本来広告宣伝費を認識すべき期間
 →平成28年4月~6月において1,200万円の広告費を認識すべきであった

・不正に実施した処理
 →平成28年7月~9月の広告宣伝費として処理

・広告の種類
 →アフェリエイト


【4】
・本来広告宣伝費を認識すべき期間
 →平成28年6月において299万円を認識すべきであった

・不正に実施した処理
 →平成28年7月の広告宣伝費として処理

・広告の種類
 →ダイレクトメール

———————————–
※対象会社は6月決算


1について、当該不正実施会社は、広告宣伝費が予想以上の金額になり自社の業績が悪化することを恐れたことから、甲社側に広告宣伝費を繰延処理する合意を得ました。

そして甲社は、平成27年12月の広告費について、平成28年1月に請求書を発行し、1月の費用として処理しました。

この処理について、同社社長や事業部部長は、「一事業年度中に処理できるのであれば大きな問題ではない」という認識があったということです。

広告宣伝費は、その役務提供を受けた時点で費用処理が必要なので、「一事業年度中であれば問題ではない」という認識は大きな誤りです。

2については、ラジオでの広告宣伝なので、ラジオの放送月とその広告の放送回数に応じて、発生主義で費用認識する必要がありますが、甲社との協議により繰延処理を実施していました。

3については、6月決算の当社にとって、6月の業績が悪化することを避けるために、4月~6月で認識すべき広告宣伝費を7月~9月の費用として処理することを甲社と合意していました。

4については、平成28年6月に実施したダイレクトメール費用を、やはり6月の費用を避けるために7月の費用とすることを甲社と合意して、甲社はそのように請求書を作成していました。

広告宣伝費は、その広告を実施した時期に認識すべきものです。
それを決算の利益獲得のために、翌期に繰り延べることは許される処理ではありません。

この不正を招いた原因としては、次のことがあげられます。

・同社には業績目標達成のプレッシャーがあったこと
・甲社としても売上の大部分を依存していたことから、相手側からの不正の要請に対して従うしかなかったこと
・さらに、同社と甲社との間で広告費の計算方法や実績確定の時期について明確に合意された書面がなかったこと


ただ、

 

お問い合わせボタン

無料会員数

無料会員 現在16,986名

知らないと損をする助成金活用術

b03

b03

ログインフォーム

プレミアム会員詳しくはこちら(管理職が知っておくべき労働法)

b03