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代表者のコンプライアンス違反による不正会計事例を解説




代表者である社長が自らコンプライアンス違反をして、不正会計に関与した事例があれば教えてください。


【この記事の著者】 江黒公認会計士事務所 公認会計士 江黒 崇史
http://www.eguro-cpa.com/

昨今は相次ぐ企業の不祥事によりコンプライアンス遵守が一層叫ばれる時代となりました。
会社としてはルールづくりをしたり、承認プロセスを確立したりしても、残念ながら社長が1人で暴走してしまうことがあります。

今回は、とある上場会社の子会社社長が社内規定や取締役、親会社社長の承認を得ずに不正に会社の現金を支出していた事件を紹介します。

不正要素を簡潔にまとめると次のようになります。

不正科目

前渡金

不正内容

代表取締役社長による内規違反(約3000万円の不正出金)。

主たる不正手法

十分な情報収集及びリスク判断を行なわず、実行すべき社内手続き、印章管理規程を無視した独断の出金

これまでは、次のような目的による事例が多くありました。

・自社の売上・利益の増加目的
・費用を減らすための繰延処理
・不正実行者の私利私欲のため

しかし、今回の事例は、他社の資金繰り融通目的で自社の資金を不正に出金した事例です。

不正が発生した会社(A社とします)は無線機等通信機器全般の販売や設計、施工、保守などを行なっていました。

そこにB社という通信サービス技術の開発及び販売をしている会社の代表者が、B社が資金ショートしそうなため借入の相談にきました。
A社の代表者X氏は、B社の状況に理解を示したものの、A社及びX氏は貸金業を行なっている訳ではないため拒否をしました。

ところが、B社では新しい防災告知放送事業の構想があり、その事業は「将来、A社にとって受注が生じるかもしれない」とX氏は考え、本事業に関する取引としてB社に資金を融通できるのでは、と考えるようになりました。

X氏はA社の取締役Y氏や執行役員Z氏に意見を求めました。
Y氏は契約書等を確認してから始めるべきと答え、Z氏はやらない方が良いと答えました。

ところが、X氏はY氏、Z氏の意見を無視して自分の責任で本件を進めることを伝えました。
この時点でコンプライアンス違反といえますが、A社とB社の覚書について、印章管理規程を無視してX氏が自ら押印をしました。

また、

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