企業は役員にインセンティブ報酬として、ストックオプションを付与する方法もあります。
しかし役員に対してストックオプションを付与する場合、法人・役員のそれぞれで税制上の注意点があるので解説します。
【この記事の監修者】
讃良周泰税理士事務所 税理士 讃良 周泰
目次
新株予約権とストックオプションの違い
新株予約権は、発行した株式会社に対して権利行使することで、その発行会社の株式の交付を受けることができる権利です。
またストックオプションは、役員や従業員に対し労働の対価として新株予約権を付与するものです。
したがってストックオプションは新株予約権の一種であり、社内向けに発行される新株予約権をストックオプションといいます。
ストックオプションの税制適格・非適格の違いによる影響
ストックオプションには、「税制適格ストックオプション」と「税制非適格ストックオプション」の2種類あり、一定の要件を満たしたストックオプションが税制適格ストックオプションに該当します。
税制非適格ストックオプションの場合、取得したストックオプションの権利行使した時点と、権利行使により取得した株式を売却した時点で所得税が課税されます。
一方、税制適格ストックオプションは、ストックオプションを権利行使した時点では課税されず、権利行使して取得した株式を売却した際に発生した経済的利益に対して所得税を課されることになります。
したがってストックオプションでも、税制適格・非適格の違いによって課税時期が異なるので注意してください。
平成29年度税制改正によるストックオプションの取扱いの変更点
新株予約権(ストックオプション)による役員給与については、平成29年度税制改正以前は定期同額給与や事前確定届出給与に類するものとして、法人税法第34条第1項(役員給与の損金不算入)の対象外でした。
しかし平成29年度税制改正でストックオプションの取り扱いが変更になり、法人税法第34条第1項の損金算入要件を満たさないものは損金不算入となりました。
新株予約権を役員に付与した場合の取扱い
役員等の個人から役務の提供を受ける場合において、その役務の提供にかかる費用の額につき、特定新株予約権が交付されたときは、その役員等の個人に給与等課税事由が生じた日において、その役務の提供を受けたものとして法人税法の規定が適用されます。
役員等から受ける役務提供の対価としてストックオプションを用いる取引については、会社法上は報酬債権をもって相殺しているため、有償発行と整理されます。
なお次の項目にすべて該当する場合、所得税法第36条(収入金額)の適用上、付与時及び相殺時における収入すべき金額はないこととなり、権利行使時まで課税関係は生じません。
● 報酬債権が役職に応じて支給される固定報酬とは別のもの
● 新株予約権の払込金との相殺に供される
● いかなる事情があろうとも現実に金銭が支払われることはない
● 権利行使がされるまでは新株予約権に係る経済的利益は実現しない
権利行使益は、権利行使日における株価(時価)から新株予約権の取得価額に権利行使価額を加算した金額を控除した金額とされています。
ただし、その譲渡が禁止されていること等により付与時に課税されない新株予約権については、取得価額はないものとして取り扱いますので、権利行使日における株価(時価)から権利行使価額を控除した金額が権利行使益となります。
個人の役務提供につき給与等課税事由が生じない場合の損金算入
法人が役員等の個人から役務の提供を受ける際、その役務の提供に係る費用の額につき特定新株予約権が交付されたときに被付与者たる個人において、役務の提供につき給与等課税事由が生じない場合、特定新株予約権を交付した法人のその役務の提供に係る費用の額は発行法人の各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入されません。
たとえば付与した新株予約権が税制適格ストックオプションに該当する際に、給与等課税事由が生じない場合、損金算入額はないこととなります。