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適格分割の税制上のメリットと適用要件

会社分割により組織再編を行う場合、分割が適格分割と非適格分割のどちらに該当するかで組織再編時の課税関係が異なります。

本記事では、適格分割と非適格分割の税制上の違いと、適格分割の適用要件について解説します。

【この記事の監修者】
讃良周泰税理士事務所 税理士 讃良 周泰

会社分割の概要

会社分割は、会社の事業の全部または一部を切り離し、他の会社へ承継させる組織再編の手法です。

会社法上の会社分割には、「吸収分割」と「新設分割」があります。

吸収分割は株式会社等が事業に関する権利義務の全部(一部)を、分割後に他の会社へ承継させる分割方法をいい、新設分割は株式会社等が事業に関する権利義務の全部(一部)を、分割により設立する会社へ承継させる分割方法です。

吸収分割と新設分割は、対価の内容によって「分社型分割」と「分割型分割」に分かれることから、会社分割の種類は「分割型新設分割」・「分割型吸収分割」・「分社型新設分割」・「分社型吸収分割」の4つに分類されます。

適格分割により組織再編を行うメリット

適格分割は一定の要件を満たした会社分割をいい、それ以外の会社分割は非適格分割に分類されます。

非適格分割で組織再編を行うことに問題はありませんが、会社の資産を移転する際に課税関係が生じる点には注意が必要です。

組織再編時の資産の時価が簿価よりも高い場合、差額が法人税の対象になりますし、分割法人の株主等にはみなし配当が発生することから、組織再編を行う際に税負担を強いられます。

一方、適格分割により会社分割を行う場合、会社の資産は帳簿価格で引き継ぐことになるため、再編時の課税関係は生じません。

適格分割の要件は組織再編の状況によって異なりますので、組織を再編成する前に要件を満たすことができるか確認してください。

分社型分割の適格要件

分社型分割は、会社分割で事業を承継する会社が会社分割を行う会社に対し、対価として株式を割り当てる分割をいいます。

分社型分割の適格要件は、事業を切り離す「分割法人」と、切り離した事業を受け入れる「分割承継法人」の関係性に応じて3パターンあります。

<分社型分割の適格要件のパターン>
・完全支配関係内組織再編
・支配関係内組織再編
・共同事業を行うための組織再編

分社型分割が完全支配関係内組織再編の場合の適格要件は下記の通りです。

・金銭等不交付要件
・継続保有要件

完全支配関係は、支配法人が被支配法人の発行済株式を100%保有している状態をいい、完全支配関係があるケースが最も適格要件を満たしやすいです。

分割対価は原則分割承継法人の株式のみとしており、金銭を対価にすることは一部の例外を除き認められません。

また、完全支配関係は分割前だけでなく、分割後も継続することが求められます。

支配関係内組織再編の場合の適格要件は下記の通りです。

・金銭等不交付要件
・継続保有要件
・事業移転要件
・事業継続要件

支配関係は、支配法人が被支配法人の発行済株式のうち50%超を保有している状態をいい、分割の対価に金銭を用いることは原則認められません。

会社分割時に分割事業の主要な資産および負債を移転するだけでなく、分割事業の従業員の概ね80%以上を分割承継法人の業務に従事させることが求められます。

分割事業は分割承継法人が分割後も引き続き営む必要があるなど、適格要件は完全支配関係内組織再編のケースよりも厳しいです。

共同事業を行うための組織再編の場合の適格要件は下記の通りです。

・金銭等不交付要件
・継続保有要件
・事業移転要件
・事業継続要件
・事業関連性要件
・同等規模要件または双方経営参画要件

完全支配関係や支配関係がない法人間の組織再編は、共同事業を行うための組織再編の適格要件を満たさなければなりません。

支配関係がある場合の組織再編の適格要件と違い、分割法人と分割承継法人のいずれかの事業とが、相互に関連性を有するものであることが求められます。

同等規模要件と双方経営参画要件については、いずれかの要件を満たしていなければなりません。

同等規模要件は、分割法人と分割承継法人の売上高や従業員数を概ね5倍以内とするもので、双方経営参画要件は分割前の分割法人および分割承継法人の特定役員がそれぞれ1名以上、分割後の分割承継法人の特定役員になることを求める要件です。

特定役員は、下記に該当する者をいいます。

・社長
・副社長
・代表取締役
・代表執行役
・専務取締役
・常務取締役
・これらに準ずる者のうち、法人経営の中枢に参画している者

分割型分割の適格要件

分割型分割は、分割承継法人が株式等を対価にして会社分割を行う法人の株主へ交付する会社分割です。

適格要件は分社型分割と同様、「分割法人」と「分割承継法人」の関係性によって異なりますが、分割型分割には独立して事業を行うための組織再編の要件があります。

<分割型分割の適格要件のパターン>
・完全支配関係内組織再編
・支配関係内組織再編
・共同事業を行うための組織再編
・独立して事業を行うための組織再編

分割型分割が完全支配関係内組織再編の場合の適格要件は下記の通りです。

・金銭等不交付要件
・継続保有要件
・案分型要件

案分型要件は、分割法人の株主が有する株式数の割合に応じて対価を交付することを求めるもので、分割型分割特有の要件です。

支配関係内組織再編の場合の適格要件は下記の通りです。

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