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貸付用の宅地等でも小規模宅地等の特例が適用できないケースを解説

居住用や事業用、貸付用に供している土地に対して適用する小規模宅地等の特例は、未利用地を事業用などとして活用することで要件を満たす方法もあります。

しかし、小規模宅地等の特例の適用要件は厳しくなっており、相続開始直前に事業用や貸付用として利用した土地については、特例が適用できない可能性があるので注意してください。

本記事では、宅地等を貸付用として供していた場合でも、小規模宅地等の特例を適用できないケースについて解説します。

【この記事の監修者】
讃良周泰税理士事務所 税理士 讃良 周泰

貸付事業用宅地等を適用する際の基本的な注意事項

貸付事業用宅地等は小規模宅地等の特例の一つで、土地を貸付用として利用していた場合に適用することができます。

被相続人が相続開始直前まで不動産事業として利用していた宅地等を対象地とし、相続人が被相続人の事業を引き継ぐことで貸付事業用宅地等の要件を満たします。

他の制度と比べ、貸付事業用宅地等は比較的適用要件を満たしやすい制度ですが、限度面積200㎡・減額割合50%と、節税効果は控えめです。

特定居住用宅地等用や特定事業用宅地等などを適用する場合、各制度で設定されている限度面積までそれぞれ適用することができますが、貸付事業用宅地等を適用するときは、小規模宅地等の特例を適用する土地全体で限度面積を計算しなければなりません。

そのため、複数の土地に小規模宅地等の特例を適用できる状況下にある場合には、貸付事業用宅地等を適用する優先度は他の制度よりも低いです。

<貸付事業用宅地等を適用しない場合の計算式>

種類
①特定居住用宅地等
②特定事業用宅地等
③特定同族会社事業用宅地等

限度面積の計算式
①≦330㎡
(②+③)≦400㎡
※限度面積は合計730㎡

<貸付事業用宅地等を適用する場合の計算式>

種類
①特定居住用宅地等
②特定事業用宅地等
③特定同族会社事業用宅地等
④貸付事業用宅地等

限度面積の計算式
①×200/330 +(②+③)×200/400+④≦200㎡

貸付事業用宅地等の3年縛り規制

貸付事業用宅地等の利用区分は相続開始時点で判断しますが、3年縛り規制に該当する場合には、貸付用として利用していた土地であっても、貸付事業用宅地等には該当しません。

3年縛り規制の対象になるのは、相続開始前3年以内に新たに貸付事業用に供された宅地等で、該当する土地は原則として貸付事業用宅地等の対象から外れます。

「新たに貸付事業用に供された」とは、貸付事業用以外の用に供されていた宅地等が貸付事業用に供された場合や、宅地等もしくはその上にある建物等につき「何らの利用がされていない場合」の宅地等が、貸付事業用に供された場合をいいます。

賃貸借契約等で更新したケースは、新たに貸付事業の用に供された宅地等には該当しませんが、貸付事業用宅地等を適用するために貸付事業を始める方は、事業の開始時期に注意しなければなりません。

貸付事業用宅地等の3年縛りの対象にならないケース

相続開始前3年以内に新たに貸付事業用に供された宅地等であっても、次に該当するケースについては、3年縛りの対象にはなりません。

特定貸付事業を事業的規模で継続的に営んでいる

特定貸付事業を継続的かつ事業的規模で営んでいる場合、3年縛り規制の対象から外れます。

「特定貸付事業」は準事業以外の貸付事業をいい、「準事業」は事業と称するに至らない不動産の貸付け、その他これに類する行為で相当の対価を得て継続的に行うものをいいます。

被相続人等の貸付事業が準事業以外の貸付事業に該当するかは、社会通念上事業と称するに至る程度の規模で貸付事業が行われていたか、事業的規模については所得税基本通達26-9の「5棟10室基準」に準じて判断します。

3年以内に二次相続が発生した場合

被相続人が相続開始前3年以内に発生した相続で貸付事業用に供されていた宅地等を取得し、取得日以後引き続き宅地等を貸付事業用として供していた場合、その宅地等は二次相続において3年縛りの対象から外れます。

そのため、二次相続の被相続人が一次相続で貸付事業用宅地等を適用していた場合、二次相続の開始が一次相続の3年以内であれば、二次相続で3年縛りを考慮せずに貸付事業用宅地等の適否判定を行うことができます。

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