弁護士や公認会計士などに報酬を支払う場合、源泉徴収義務が生じる可能性があります。
源泉徴収義務者は、徴収した税金を定められた期限までに納めなければなりませんが、源泉徴収が必要になるかは報酬等の種類や性質によって異なりますので、本記事で源泉徴収の対象になる報酬等の範囲と納付時期について解説します。
【この記事の監修者】
讃良周泰税理士事務所 税理士 讃良 周泰
目次
源泉徴収義務者とは
源泉徴収義務者は、報酬等の支払時に所得税および復興特別所得税を差し引く者をいいます。
会社だけでなく、個人も源泉徴収義務者となりますし、学校や官公庁、人格のない社団・財団などについても、源泉徴収義務者になります。
一方で、常時2人以下のお手伝いさんなどの家事使用人に対してのみ給与を支払っている個人については、支払う給与や退職金に対して源泉徴収をする必要はありません。
個人に対して報酬・料金等を支払う際の源泉徴収の範囲
国内において、居住者に対して次の報酬・料金等を支払う場合、支払者は所得税等を徴収しなければなりません。
<源泉徴収の対象範囲>
- ・従業員への給与等
- ・原稿料や講演料等
- ・弁護士や公認会計士など、特定の資格を持つ者へ支払う報酬・料金
- ・社会保険診療報酬支払基金が支払う診療報酬
- ・プロ野球選手やモデルなどに支払う報酬・料金
- ・外交員などに支払う報酬・料金
- ・映画や演劇などの出演等の報酬・料金や、芸能プロダクションを営む個人に支払う報酬・料金
- ・ホステスなどに支払う報酬・料金
- ・プロ野球選手の契約金など、役務の提供を約することで一時に支払う契約金
- ・広告宣伝のための賞金
- ・馬主に支払う競馬の賞金
原稿料や講演料等の範囲には、デザインの報酬や著作権の使用料、翻訳・通訳の報酬・料金等が含まれます。
ただし、原稿料や講演料等のうち、懸賞応募作品等の入選者に支払う賞金等については、1人に対して1回に支払う金額が5万円以下であれば、源泉徴収をする必要はありません。
法人に対して報酬・料金等を支払う際の源泉徴収の範囲
報酬・料金等の支払先が法人の場合、原則として源泉徴収義務は生じません。
しかし、馬主である法人に対して支払う競馬の賞金については、源泉徴収の対象となります。
報酬・料金等の支払いを受ける者が個人か法人かが明らかでない場合
法人として扱われる団体に対して支払う報酬・料金等は源泉徴収が不要ですが、団体が個人として扱われる場合には、源泉徴収をしなければなりません。
研究会や劇団などの団体に報酬・料金等を支払う際、その団体が個人か法人のどちらに該当するか明らかでないときは、団体の活動状況や納税状況で個人・法人の判断を行います。
報酬・料金等の支払いを受ける団体が法人税を納付する義務があることや、定款または規約、日常の活動状況からみて、個人の単なる集合体ではなく団体として独立して存在していることを明らかにしている場合、その団体は法人として扱います。
一方、上記に該当しない団体は個人として扱うことになるため、源泉徴収義務が生じます。
名目上は報酬・料金等ではない支払いの取扱い
源泉徴収の有無は名目ではなく、実質で判断します。
謝礼や取材費、車代などの名目で支払われたものであったとしても、実態が報酬・料金等であれば源泉徴収をしなければならず、金銭以外で支払った報酬・料金等についても源泉徴収の対象です。
なお、報酬・料金等の支払者が交通機関やホテル等に対し、通常必要な範囲の交通費や宿泊費などを直接支払った場合、それらを報酬・料金等に含める必要はありません。