減価償却資産は、取得価額を複数年にわたって損金算入するのが原則ですが、一定の要件を満たす減価償却資産は取得価額の全額を損金算入することが認められています。
中小企業等については、即時償却できる価額が拡大しますので、今回は少額減価償却資産の損金算入と、中小企業者等が適用できる少額減価償却資産を取得した際の特例措置について解説します。
【この記事の監修者】
讃良周泰税理士事務所 税理士 讃良 周泰
少額減価償却資産の取得価額の損金算入とは
減価償却資産は、原則として耐用年数に応じて取得価額を分割して損金に算入します。
しかし、法人が事業用として供した減価償却資産のうち、取得価額10万円未満であるものまたは、使用可能期間が1年未満であるものについては、即時償却することが可能です。
損金に算入する時期は、事業用に供した日の属する事業年度において損金経理をしたタイミングで、取得価額は通常1単位として取引される単位ごとに判定を行います。
たとえば、機械や装置については1台(1基)ごと、工具・器具および備品については1個または1組(1揃い)ごとに取得価額を判定します。
一方、構築物のうち、枕木や電柱など、単体では機能を発揮できないものについては、一の工事等ごとに取得価額を判定しなければなりません。
「使用可能期間が1年未満のもの」は、法人の営む業種において、一般的に消耗性のものと認識されるもののうち、法人の平均的な使用状況や補充状況などからみて、その使用可能期間が1年未満のものが対象です。
使用可能期間と法定耐用年数は異なるため、仮に法定耐用年数2年の減価償却資産であったとしても、実際の使用できる期間が1年未満に該当する場合には、「使用可能期間が1年未満のもの」として取り扱います。
少額減価償却資産の取得価額を判定する際の消費税の取扱い
少額価償却資産の取得価額の損金算入の規定を適用する場合において、取得価額が10万円未満であるかどうかは、法人が適用している消費税等の経理処理方式に応じて算定した価額で判定します。
法人が税抜経理方式を適用しているときは消費税等抜きの価額、税込経理方式を適用している場合は、消費税等込みの価額が判定する際の取得価額です。
したがって、減価償却資産の価額が消費税等込みで10万円を超えていたとしても、法人が税抜経理方式を採用している場合には、減価償却資産の消費税等を抜いた価額が10万円未満であれば全額を損金に算入することが可能です。
なお、消費税の免税事業者となっている法人は税込経理方式しか採用できませんので、消費税等込みの価額が取得価額となります。
中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例
中小企業者等については、要件を満たすことで30万円未満の減価償却資産を即時償却することができます。
制度の概要
中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例は、取得価額が30万円未満である減価償却資産を取得し、事業用として供した場合、取得価額に相当する額を全額損金算入できる制度です。
本特例を適用する際は、事業用に供した事業年度において少額減価償却資産の取得価額に相当する金額の損金経理を行い、確定申告書等で「少額減価償却資産の取得価額に関する明細書(別表16(7))」を添付して申告する必要があります。
取得価額が10万円未満のものまたは、一括償却資産の損金算入制度の適用を受けるものは本特例の適用はありません。
また、本特例を適用する資産については、租税特別措置法上の特別償却や税額控除、圧縮記帳との重複適用はできないのでご注意ください。