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税効果会計を適用する目的と効果、手続き方法を解説

税効果会計は、会計期間における損益を適切に算出するための手法で、上場企業などでは税効果会計が義務付けられています。

本記事では、税効果会計の概要と適用した際の効果、手続きのしかたについて解説します。

【この記事の監修者】
讃良周泰税理士事務所 税理士 讃良 周泰

税効果会計とは

税効果会計は、財務会計上の損益と税務会計上の損益に差異がある場合において、差異を正確に計算し、法人税などを適切に期間分配するための手続きです。

財務会計は企業利益を算定する目的で企業会計基準を、税務会計は課税所得の算定を目的に税法を基に計算を行うため、損益計算書上の税引前当期純利益と課税所得金額は基本的に一致しません

会計処理の違いで生じたズレを調整しないと、投資家などの利害関係者は期間利益を正確に把握できなくなる恐れがあるため、差異による不整合を調整するための処理を要します。

税効果会計では、利益を課税標準とする法人税等の額を適切に期間配分することで、税引前当期純利益と法人税等を合理的に対応させることができるため、利害関係者に適正な期間損益を示すために用いられています。

税効果会計の適用義務がある企業

上場企業や金融商品取引法の適用を受けている非上場企業などは、税効果会計の適用が義務となっています。

中小企業などに関しては、税効果会計の適用義務はありませんが、任意で導入することは可能です。

たとえば、上場企業等に該当しなければ税効果会計は原則不要ですが、親会社が上場企業の場合には、会計方針を一致させる目的で子会社に対しても税効果会計を適用することがあります。

税効果会計の対象となる差異

税効果会計は、財務会計と税務会計の差異を調整するために行いますが、調整対象にならない差異も存在します。

一時差異

一時差異は、貸借対照表上で計上される資産および負債と、課税所得計算上の資産および負債の差額をいいます

たとえば、財務会計上で減価償却費を費用として計上できたとしても、税務会計(法人税法)上では、同額を損金として計上できない場合があります。

税効果会計は、このような一時的に生じた差異を解消させる目的で適用するので、処理を行うときは一時差異の算出が必要です。

一時差異には、一時差異が解消されるときにその期の課税所得を減額する効果を持つ「将来減算一時差異」と、その期の課税所得を増額する効果を持つ「将来加算一時差異」があります。

貸倒引当金や退職給付引当金等の引当金の損金算入限度超過額、減価償却費の損金算入限度超過額などがある場合、将来減算一時差異が生じます。

一方、将来加算一時差異が生じるのは、利益処分により租税特別措置法上の準備金等を計上した場合などです。

なお、将来の課税所得と相殺可能な繰越欠損金等については、一時差異と同様に取り扱います。

永久差異

永久差異は、期間が経過しても解消されない差異をいいます。

財務会計と税務会計の考え方が異なることで生じる差異であるため、将来的に差異が解消されることはなく、受取配当金や一定額を超えた交際費などが永久差異に該当します。

税効果会計の対象となる差異は一時差異に限られますので、永久差異に該当するものは税効果会計の対象から除かれます。

税効果会計の種類

税効果会計は、「資産負債法」と「繰延法」のいずれかを用いて処理を行います。

資産負債法

資産負債法は、財務会計における資産・負債と、税務会計における資産・負債に一時差異が生じた場合、その事業年度に繰延税金資産または繰延税金負債を計上する方法です。

税効果会計では資産負債法が採用されることが多く、将来的に差異が解消されることを想定しているため、繰延税金資産または繰延税金負債を計算する際は、一時差異が解消されることが見込まれる事業年度の税率を適用します。

繰延法

繰延法は、財務会計における収益または費用の額と、税務会計における益金または損金との間に一時差異が生じた場合、その一時差異が解消される事業年度まで繰延税金資産または繰延税金負債を計上する方法です。

繰延税金資産または繰延税金負債を計算するときは、一時差異が生じた事業年度に適用される税率を用います。

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