会計事務所における使用人(会計事務所職員)の監督義務には、どのようなものがあるのでしょうか?
税理士法違反は税理士本人だけなく、使用人である会計事務所職員が犯してしまうケースも多々あります。
そこで今回は、使用人(会計事務所職員)に対する監督義務について解説します。
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【この記事の監修者】 讃良周泰税理士事務所 税理士 讃良 周泰
監督義務の項目
使用人(会計事務所職員)等が税理士法違反を犯さないように、使用者が監督することを指します。
主な項目は次の通りです。
・脱税相談等の禁止(税理士法第36条):納税者から不正な相談に応じたり、指示したりしないこと
・守秘義務(税理士法第38条及び第54条):業務上で知りえた納税者の情報を在職中はもちろん、退職後も第三者へ漏らさないこと
・職員等のにせ税理士行為等の禁止(税理士法第52条及び第53条)
・所長税理士又は税理士法人に書面による承諾を得ず、無断で所属税理士が所属先と関係ない納税者から税理士業務等を受注することの禁止(税理士法施行規則第1条の2第2項)
使用人等の範囲
雇用契約を結んでいる所属税理士・職員だけでなく、税理士の支配権の及ぶすべての者を含みます。
たとえば、会計事務所や税理士法人と事実上一体のグループ企業や家族従事者が該当します。
支配権が及ぶかどうかは個別のケースに応じて判断します。
使用者の範囲
・開業税理士
・税理士法人(社員税理士)
懲戒処分となるケース
①使用人等の不正行為を使用者が認識していた場合
所属税理士・職員だけなく、使用者である所長税理士等が自ら不正を行なったものとして懲戒処分の対象となります。
例えば、職員が脱税相談を受けていることを認識していれば、所長税理士等も脱税相談等の禁止違反の懲戒処分を受けます。
②使用人等の不正行為を使用者が認識していなかった場合
・内部規律、内部管理体制の不備について過失があると認められる場合、上記①と同様に使用者である所長税理士等が自ら不正を行なったものとして懲戒処分の対象となります。
・内部規律、内部管理体制の不備について過失がない場合
使用者の監督が不適切な場合には、使用人等に対する監督義務として懲戒処分の対象となります。
なお、使用者に上記の過失があるかどうかは個別のケースに応じて判断します。
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懲戒処分の量定
・脱税相談等の禁止違反:6月以上2年以内の税理士業務停止又は税理士業務の禁止
・守秘義務違反:2年以内の税理士業務停止又は税理士業務の禁止
・所属税理士が無断で所属先と関係ない納税者から税理士業務等を受注した場合:戒告、2年以内の税理士業務停止、税理士業務の禁止
・使用人等に対する監督義務違反:戒告又は1年以内の税理士業務停止
使用人等に対する監督義務違反を犯した場合の両罰規定
使用人等が税理士法違反を犯した場合には、本人だけなく使用者である所長税理士等(税理士法人を含む)にも罰金刑が課せられます。
①使用者に対する罰金刑
・脱税相談等の禁止違反:200万円以下の罰金
・職員のにせ税理士・守秘義務違反・所属税理士の無資格者への名義貸し:100万円以下の罰金
②違反行為を犯した使用人に対する罰則
・脱税相談等の禁止違反:3年以下の懲役又は200万円以下の罰金
・職員のにせ税理士・守秘義務違反・所属税理士の無資格者への名義貸し:2年以内の懲役又は100万円以下の罰金
内部体制及び内部管理体制の構築について
日本税理士連合会では、主に次のような具体的な指針を示しています。